「無理だ、呑めない。地方で暴動が起きるぞ」
公明が求めた企業団体献金の規制––––これは、現在は政党本部、都道府県連、さらに政治家個人の地方支部に認められている企業団体献金の受け入れ先を政党本部と都道府県連だけに限定するものだった。自民は地方議員が3千人前後もいると言われている。
高市氏は公明をつなぎとめるため、自民党内で政治改革をリードする渡海紀三朗元政調会長に相談した。渡海氏はこう答えたという。
「無理だ、呑めない。地方で暴動が起きるぞ」
献金の受け入れ先を党本部と都道府県連に絞る公明案は透明化を促すものだ。自民の地方議員は自らの政党支部という「第2の財布」を失うことになる。つまり国会議員は良くても地方議員が絶対に呑めない案だ。
全国3千人の地方議員に支えられている自民党が絶対に承諾できない案だった。高市氏は「総裁であってもこれは一人で決められるものではない」とすがったが、斉藤氏は一歩も譲らなかった。
「まるで令和のハルノートだよ。最初から自民が呑めない案をぶつけてきた。公明は最初から高市氏と交渉するつもりはなかった。連立離脱は決まっていたんだろう」
高市氏周辺はそう言って怒りをぶちまける。
一方で、創価学会関係者は、今回の連立解消の理由は主に二つあると説明する。
学会関係者が語る連立解消2つの理由
一つは高市氏が7日に決めた党役員人事だ。麻生太郎副総裁、鈴木俊一幹事長、有村治子総務会長、小林鷹之政調会長、古屋圭司選挙対策委員長。そして萩生田光一幹事長代行。
「この中で公明の選挙応援に来てくれていたのは小林さんだけだ。話にならない。石破さんや小泉さんは本当によく公明の応援をしてくれた」
公明にとっては「選挙の勝利こそが信仰心の証し」だ。学会幹部たちは自公連立の最大の目的は選挙協力だと言い切る。そんな支持母体にとって、公明の応援をしてくれない議員が並んだ高市執行部は受け入れられない。
ましてや公明幹部や創価学会を名指しして「がん」と発言した麻生氏が副総裁。政治資金規正法違反で政策秘書が今年8月に略式起訴されたばかりの萩生田氏も入った。
別の学会幹部は「萩生田さんが入った時点で、高市自民との連立維持の選択肢は風前のともしびだった」と打ち明ける。
加えて、5日に高市氏が国民民主党の玉木雄一郎氏と極秘で会談していたことが明らかになる。麻生氏も6日に国民民主の榛葉幹事長と会談した。