放置子の対応法は?
だが、放置子の対応には難しさがあるのも事実。前出・親野氏は、一人で対応しないことが大切だとアドバイスする。
「放置子から我が子が攻撃を受けたり放置子に迷惑したときには、学校の担任や学年主任など学校側に相談してください。子ども家庭センターや、児童相談所、児童養護施設などの行政機関の力を借りるのもひとつの方法です。
どこに相談すればいいか迷ったときは、市役所で事情を説明すれば適切な窓口を教えてくれるはずです」(前出・親野氏)
だが、第三者への相談はハードルが高いと感じている人も多いようだ。
取材を進める中で、「児童相談所に連絡を入れて良い基準がわからない」と話す保護者が複数いたのだ。相談するうえで「基準」はあるのか?
東京都足立児童相談所の所長は「放置子の定義が定かではないため、申し上げづらいところはある」と前置きしたうえで、こう説明した。
「“気になるな”“心配だな”というご家庭があるときには、ご相談ください。虐待の恐れがある場合はもちろんですが、“気になるな”という程度でもお近くの児童相談所や各市区町村に設置された子ども家庭相談の窓口にご連絡をしていただいて大丈夫です。
通報をした方に対する秘匿性も遵守しますので、“毎晩、〇〇公園に○歳くらいの子どもが一人で遊んでいて気になる”のようなお話でもいいです。
できれば、学校名と名前がわかると、その後スムーズに、ご家庭の状況を親御さんや学校に確認できますし、地域とも連携をはかりやすいです」
今後、放置子を減らして行くためにはどのようなことが必要なのか。前出・親野氏は言う。
「経済的な支援も必要ですが、何よりも生活全般の指導を行う機関が必要になってくるのではないでしょうか。たとえば、地域住民の生活をサポートしている民生委員をもっと機能させる。
私が担任をしていた父子家庭で、電気代が未払いで、水道は止められ、給食費を払わないお宅がありました。自宅に伺うと、ポストには督促状だらけなのに、横に停めてある自家用車は高級車で驚きました。必要なところに然るべきお金が行き渡るよう指導や監督が必要です」
放置子問題の解決には、地域住民の“親心”も必要だという。親野氏がこう続ける。
「放置子のなかには、“唯一の食事”が給食という子どもも少なくありません。困窮世帯の支援をする認定NPO法人・キッズドアでは食料支援の申し込みもできますが、こうした機関を知らない“放置親”もいるんです。
一般の個人が直接的な支援をするのは難しくても、完全に目を背けるのではなく、組織的な支援につなげるお手伝いはできると思います。先ほどあげた児童相談所などの行政機関に連絡をすることもそのひとつです。
放置子や気になる子どもを見つけたら、可能な範囲でできる親切心は持っていてほしいなと思います」
子どもたちが安全で楽しく暮らせるよう、我々大人も温かく見守っていきたい。
取材・文/山田千穂 集英社オンライン編集部ニュース班