放置子はなぜ増えているのか

23年間教壇に立った元教員で、『子育て365日』(ダイヤモンド社)などの著書がある教育評論家の親野智可等氏は放置子増加の背景と放置子の特徴についてこう語る。

「放置子が増えている理由のひとつは、貧困家庭が増えていることです。背景には、自宅時間を満足にとれない必死で働くひとり親家庭の増加、精神疾患やさまざまな理由で働くことができない家庭の存在があります。

愛情はあるけれど、経済的事情により子どもと向き合い愛情をかけたり伝えたりする時間がないと、子どもが愛情不足感を募らせてしまう。愛に飢えた状態で、お友達の家庭に親の愛情を求めてしまう放置子もいます」

写真はイメージです(PhotoAC)
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このような子どもは、よそのお宅へ行くと普段満たされない気持ちを発散させるように、愛想よく大人に話しかける一方で、家族の話はしたがらないという。

「30年ほど前、教員時代に担任をしていた放置子は7人兄弟のうちのひとりでした。母親は境界知能(※知能指数が“平均的とされる領域”と“知的障がいとされる領域”の境界に位置している)で、子どもを産んだあとの経済面での見通しが甘く、次から次へ出産していたのです。家庭訪問に伺うと、自宅は片付いておらず、親が洗濯もしていない状況でした。子どもが入浴をしないまま登校する日も少なくありませんでした。

経済的な問題だけではなく、両親共に自営業で仕事に熱中するがゆえに子どもを放置している家庭もありました。忘れものが多いので注意するように伝えても“忘れたら学校に借りればいい”と言い、いっこうに改まらず困った記憶があります。

親自身も放置されて育ったため、“愛情の注ぎ方がわからない”というかたもいました」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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このような家庭で育った子どもは、自己肯定感が低い上に、表情が乏しく覇気がない傾向があるという。また、最初に人間関係を築く過程で親への信頼感を育めないことは、その後の人生に暗い影を落とす。

そればかりか、幸せそうな友人の家で無意識に抱く「羨ましい」という嫉妬心や「自分もそこに入れてほしい」という願いが、時として攻撃心に変わることもあるという。親切心から自宅にあげていた放置子が、自分の子どもに暴力を振るうようになったケースもあるのだとか。

放置子を巡るトラブルに巻き込まれたのは東京都在住のNさんだ。

「下校後に何度か家にあげた息子の友人が、休日も早朝から自宅を訪ねてきては玄関前で待ち伏せをするようになりました。出掛けようと外に出ると“ついて行きたい”と言い始めたので、このままではマズイと思い向こうの母親に電話をかけました。

返ってきたのは“私は、お宅に息子をお邪魔させてくれなんて頼んだ覚えはない! 勝手に(家に)あげたのはあなたでしょう? 放置なんてとんでもない、うちは自由主義で息子の意思を尊重しているだけ”と言われ、御礼のひとつもなく怒って電話を切られました」(Nさん)

写真はイメージです(PhotoAC)
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