「1泊2万5000円」民泊のヤミ営業を阻止 

2月半ばを過ぎた頃、5階の空き部屋の前にアマゾンの宅配荷物が届けられた。宛名は中国人名で、1つは電子レンジだが、他の2つは中身が分からなかった。続いて、3階の空き部屋にも荷物が届けられた。こちらはダブルベッドのフレームとテレビだった。そして2つの空き部屋のドアノブに、民泊に利用される黒のキーボックスが設置された。

ほどなくして、大きな荷物を抱えた海外からの宿泊客が次々と訪れるようになった。

「大勢でやってくる時もありましたし、夜、部屋で騒いでいる時もありました。また、ベランダでタバコを吸って、煙が私の部屋に流れて来たこともありました。ほぼ毎晩、見知らぬ人たちが出入りするようになったのです」(50代の男性住人)

防犯カメラにうつった民泊客(写真/住人提供)
防犯カメラにうつった民泊客(写真/住人提供)

民泊はヤミ営業であり、それを阻止したのは40代の男性住人である。

「5階の空き部屋にダブルベッドが運び込まれたのを見て、民泊に利用されると思って管理会社に連絡しましたが、何も把握していませんでした。その後、民泊予約サイトで探してみると、3階と5階の2部屋が1泊2万5000円で民泊として宣伝されていることが確認できました。しかし板橋区役所の公式サイトを見ても、2部屋は民泊として届け出が行なわれていなかったのです」(男性)

民泊として利用する場合、住宅宿泊事業法に基づいて、東京都の場合は区役所への届け出が必要となり、届け出れば区の公式サイトで公開される。ちなみに民泊として利用する場合、事業者は住人に説明し、民泊である旨を部屋の前に掲示し、火災への対処など管理人が常駐またはすぐに駆け付けられる体制を敷く必要がある。

しかし、この2部屋では何も行なわれておらず、ヤミ営業だったのだ。男性住人が続ける。

「5階の住人に断りの手紙を書いて、監視カメラを設置すると、民泊利用者が撮影できました。皆、大きな荷物を持って、中国語を話していました。宿泊者が来たことを確認して、板橋区役所に通報したのです」

民泊用のキーボックスがかけられていた(写真/住人提供)
民泊用のキーボックスがかけられていた(写真/住人提供)

数日後、区役所から男性に返信があり、民泊として届け出がないため、観光庁を通じて民泊予約サイトに削除要請を出した、という返答が来た。予約サイトを見ると、2部屋は予約不能となり、数日後には該当ページが閲覧できなくなった。

こうして民泊のヤミ営業を阻止することはできた。しかし3月25日からほぼ1カ月間にわたり連日、予約サイトで予約を済ませていたと思われる宿泊者たちがやってきた。無届けのヤミ営業にもかかわらず、行政は、即刻止めることができないのだ。