20世帯のうち半数が転居へ「夜眠れなくなった」  

家賃爆上げの通知、オーナーを名乗る男の来訪、そして民泊のヤミ営業と不穏なことが続いて、転居を決める住人が次々と出た。

4月半ばに転居した40代の男性はこう話す。

「相談した弁護士には『一緒に闘いましょう』と言われましたが、民泊で見知らぬ人たちが出入りするようになって不安になりましたし、住み続ければ嫌がらせをされるかもしれないと思いました。

引っ越せばオーナーの思う壺だと分かっていましたが、怖気づいてしまったのです。退去の際、オーナーが立ち合いに来ることになり、怖い人だった場合に備えて知人に助っ人を頼みました。現れた若い男は『タチバナ』を名乗りましたが、日本語が不自由で、使いっ走りにしか見えませんでした」

停止されたエレベーター(写真/住人提供)
停止されたエレベーター(写真/住人提供)

なかには精神的に不安定になった住人もいる。

「70代後半のご夫婦は、管理会社がコロコロ変わり、家賃の振込先も迷うようになって、『夜、眠れない』『ご飯が食べられない』と言い出し、5月の連休中に引っ越していきました。マンションの住人とも関わりたくなかったのか、引っ越し先を聞いても『遠くよ、遠くよ』と教えてくれませんでした。あの夫婦は本当に気の毒でした」(70代の女性住人)

30代の女性も精神的に参ってしまい、調子が悪いときには起きることができなくなった。医師の診察を受けると休職を勧められ、6月から休職している。住人は20世帯。6月4日までに5世帯が転居し、7月末までにさらに4世帯の転居が決まっている。半数は住み続けて闘うことを決めたが、半数は転居を決めてしまったのだ。

 エレベーター使用停止の暴挙に…

5月の連休に入ると、民泊利用者が来ることはなくなった。オーナーは民泊を阻止されたためか、連休が明けると暴挙に出た。5月13日の早朝、「エレベーター使用停止のお知らせ」が集合ポストに投函された。「部品の破損及び電気系統の不具合により、エレベーターの運転を停止しております」と書かれていた。しかも、ハンガーローラー部品(扉を動かすローラー)の新規製作に6カ月以上かかる見込み、と書かれていたのだ。

「早朝に出かけた妻が通知に気づいて私に連絡してきました。私が出て行くとエレベーターはまだ動いていましたが、中に入り、掲示されていた昇降機協会の連絡先をメモして、部屋に戻って問い合わせている間に、エレベーターは停められてしまったのです」(50代の住人男性)

エレベーターに貼られた通知書(写真/住人提供)
エレベーターに貼られた通知書(写真/住人提供)
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男性は、エレベーターを管理している事業者を調べて電話した。すると、2月末に点検が行われたばかりで、何の異常も無かったことを教えられた。しかもハンガーローラー部品は在庫がある上に、新規に製作しても1週間でできるとのことだった。部品の納品まで6カ月かかるというオーナー側の主張は、虚偽の可能性が高いものだったのだ。

だが、頼みのエレベーター事業者は2月末で契約を切られ、3月以降は事業者がついているのかどうかも分からなかった。エレベーターが停まり、住人は、外階段を使っての上り下りを余儀なくされた。

「1日に最低2回、多い日は5回、6回と上り下りしました。建物が古くて階段の一部がゆがんでいるし、雨の日は滑るし、本当に大変でした」(最上階に住む70代の女性)

エレベーターを停められた住人たちは、一致団結してLINEグループを立ち上げた。情報を共有しその後、オーナーと“対決”することとなる。(#4続く)

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班