「観光で来るのは大歓迎だけど…」街の声は 

しかし、人気の裏で、マナーの問題も無視できない。

センター街で取材を進めていくと、22時を過ぎたあたりからゲーセン前やコンビニ前の路上では、飲酒しながら騒ぐ観光客、地面に座り込んで大声で話すグループ、走り回る若者などが目立ち始めた。渋谷区では路上飲酒を禁止する条例があるが、それを知らない観光客も多いようだ。

近隣の飲食店で働く50代の女性スタッフは困惑する。

「ゲーセン帰りの外国人グループが店の前でたむろして、大声で話したり地面に座ったりするから、他のお客さんが店に入りにくくなっちゃうんです。観光で来るのは大歓迎だけど、せめて日本のルールやマナーを少しでも知ってから来てほしいです」

別の飲食店では、20代の男性店員が眉をひそめながらこう話した。

「ゲーセンで盛り上がったまま来店して、ドリンク一杯でずっと大声でハシャギ続ける観光客も多いです。コンビニとかで買ったお酒の空き缶を置いていく人もいて……。日本語が通じないから注意しても伝わらなくて、スタッフはフラストレーションをためがちです」

22時台のセンター街のコンビニ前には多くの外国人観光客の姿が(写真/集英社オンライン)
22時台のセンター街のコンビニ前には多くの外国人観光客の姿が(写真/集英社オンライン)

道行く日本人の声にも、戸惑いや冷静な意見が交錯する。センター街を歩く50代のサラリーマンはこう指摘する。

「人が多い中で急に走り出す人がいると、ぶつかったら危ないですからね。旅行で来て楽しんでくれるのはいいけど、『郷に入ったら郷に従え』っていうように、最低限のマナーは守ってほしい。自治体や国がしっかり周知しないとダメだと思います」

センター街には多くの外国人観光客が訪れていた(写真/集英社オンライン)
センター街には多くの外国人観光客が訪れていた(写真/集英社オンライン)

渋谷センター商店街振興組合の理事長・鈴木達治氏はこの現状をどう考えるか。

「外国人観光客の増加はありがたいと思っていますよ。円安の影響もあり、コロナ明けからは1.6〜1.7倍、昨年比でも1.3倍ほど増えています」

一方で、渋谷区は混雑や騒音、路上飲酒などへの対策も進めており、2023年10月からは都市部で初めて年間を通じた「路上飲酒禁止条例」を導入。罰則はないが、今後悪化すれば過料も検討されているという。さらに、鈴木氏はこう続けた。

「振興組合では20年ほど前から警察と協力して週に1度のパトロールを行なっていますが、2000年代と比べれば、治安はかなり改善されました。2年ほど前からは渋谷区が警備会社に委託して、夜18時から朝5時まで毎日パトロールが実施されています」

センター街には青色防犯パトロール車の姿も(写真/集英社オンライン)
センター街には青色防犯パトロール車の姿も(写真/集英社オンライン)
すべての画像を見る

外国人観光客にとって、ゲームセンターは日本文化を体験できる“観光地”となりつつあり、渋谷の街も活気付いているが、誰もが楽しめる街作りのためには、訪れる側もマナーや街の治安維持のための意識が求められている。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班