特許も取れたしせっかくだから“起業”してみよう

――実際に特許取得や起業をするなかで、特に難しかったことや悩んだことはありましたか?

一番難しかったのは“言葉”ですね。特許に関する専門用語やビジネス用語って、大人でも難しいと思うんですけど、それを小学生の私が理解しようとすると、もう本当に大変で(笑)。

説明を聞いていても、「楽しいけれど、私いま何をやってるんだろう?」って、ふと不思議な感覚になることもありました。当時はパソコンを使うのも初めてで、打ち合わせでは大人たちの会話のスピードについていくのに必死。なにより、扱っているお金の桁の大きさに目が覚める思いでした。

お年玉でもらう金額の何倍も高額な数字を見て、「これ、小学生が知る世界じゃないよな……」って(笑)。

中学生とは思えない受け答えをしてくれた水野さん(写真/本人提供)
中学生とは思えない受け答えをしてくれた水野さん(写真/本人提供)

――起業を決断するには、かなりの覚悟も必要だったと思います。水野さんご自身は、どんな心持ちでその一歩を踏み出したのでしょうか?

特許を取得したあと、「せっかく特許が取れたんだから、次は会社をつくってみたい」と思ったのがスタートです。難しく考えるというよりは、「やってみたい!」という好奇心のほうが強かったですね。

正直なところ、「うまくいかなくても、まだやり直せるし」と思っていたんです。私にとって起業は、社会勉強の一環というか……“ちょっと長めの社会科見学”みたいな感覚でしたね。

マイヤリングス社設立当初のご両親と水野さん(写真/本人提供)
マイヤリングス社設立当初のご両親と水野さん(写真/本人提供)

 ――起業から3年ほど経ちますが、当時と比べてご自身の中で変化はありましたか?

会社を立ち上げるとき、実は自分の中で「絶対に守ろう」と決めたルールがふたつあるんです。ひとつは、「わからないことは、わからないとはっきり伝えること」。そしてもうひとつは、「人の意見をしっかり聞きながらも、自分の意見をちゃんと持つこと」。

特に最初の「わからない」と言うことは、簡単そうでいて実はすごく勇気がいる行動でした。でも、大人に頼ることは恥ずかしいことじゃない。むしろ、自分が出す“助けて”のサインをちゃんと伝えることが、前に進むためには必要なんだと、実際に動いてみて気づきました。

そうやって少しずつ経験を積み重ねる中で、自分の中でも「前に進めている」という実感が持てるようになった気がします。