サラリーマンのロードマップの描きかた

私のサラリーマン時代もまさに、嫌なことを日々こなす働きかたをしていました。

ファッションは大好きなので、アパレルという業種は希望の就職先とも言えます。しかし、私の職種は販売員です。知らない人と話すことは、好きではありませんでした。

一人で黙々と仕事をするほうが性に合っているので、不向きな職種です。それでも持ち前の体育会系気質でなんとか乗り越えていましたが、20代も後半に差し掛かるにつれ、苦手なことをこのまま一生続けるのかと、未来に対して絶望と閉塞感を覚えました。

そんなさなか、EC販売というアイディアを思いつき、まさに私にとっては生存領域だと直感しました。

しかし当時の会社は全国に60店舗ほどあるアパレルの販売会社で、リアルの対面販売・接客で、いわば成り上がった企業です。オンライン通販など歯牙にもかけていません。

もっとも15年以上前の話ですから、アパレルのオンライン化は発展途上であり、今とは異なりネットで売れる服は安いものといった認識でした。実際に、高価格帯の服はまったく売れず、会社で扱っているブランド商品はオンライン化などできないだろうと誰もが思っていました。そもそもホームページすらありませんでした。

しかし、ZOZOの台頭によってにわかにネット通販に追い風が吹きます。私は、EC販売が実現したら、誰にも会わず黙々と興味のある服の仕事ができるかもしれない、と企画書を作成して上司にプレゼンしたところ、門前払いをくらいました。

なにしろオンラインの「オ」の字も知らないおじさんたちに新しいEC販売が理解できるはずもありません。

当時の社長には、インターネットは提案ができなから、まとめ買いもされない、いちいち一点一点売っていたら効率が悪いとよくわからない理屈でダメ出しをされました。おそらくリコメンド機能の精度など知りようもなかったのでしょう。

それでも私は食い下がりました。そこで年間3000万円という売上目標が登場したのです。当時の販売員は年間3000万円を売れば優秀とされ、仮にネット販売で3000万円を売ることができたら、店頭に立つ必要はありません。

そこで私が考えたのは、相手が何を求めているかです。会社が何を求めているか、どうしたら会社は私の提案にのってくれるのか。交渉しながらひたすら考えました。

時間外労働でネット通販を一年やらせてもらい、そこで年間3000万円以上を売り上げたら店頭から退いてEC事業に専従したい。

会社が求める売り上げをクリアすれば、会社にリスクはありません。そうしてようやくゴーサインを勝ち取ったのです。

ここからは地獄でした。毎日11時に出社して、12時から20時まで店頭で接客をして、その後、会社の経費で買った4万円のノートパソコンでEC事業の準備と運営をひたすら行う日々の始まりです。これが一年続きました。

時間外労働でネット通販事業を立ち上げ、年間3000万円以上を売り上げて最年少部長に…ファッションバイヤーMB、サラリーマン時代の信じられないほどキツい日々_1
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ロードマップは、「目標:店頭から退き、EC事業部を社内ベンチャーで立ち上げる」「手段:時間外労働で年間3000万円をEC販売で達成する」ということになります。

その一年間は、信じられないほどキツい毎日でしたが、一年と少しで、目標数値を叩きだして、ひと悶着の末、2年目で5000万円を達成し、3年目は社内で事業部をつくり、最年少部長となったのです。

今では笑い話ですが、会社と交渉する際は録音しておきましょう(笑)。