夜になると不安が増す理由
ひとつ不安なことがあると、それが他の不安な記憶を呼び起こし、雪だるまのように転がりながら大きな不安の塊を作ったことがありませんか?
それはハブとなる「中心的な不安」があることによって起こります。
このように、私たちの脳は「覚えている」ことより「忘れる」ことのほうが苦手なのです。しかし、だからこそ、この記憶の仕組みを理解し、うまくコントロールする方法を見つけることが重要になってきます。
大切なことは、私たちの目的は「記憶を完全に消し去ること」ではないという点です。それは大変難しく、また必要でもありません。
むしろ、その記憶が持つ「影響力」を弱めること。
つまり、記憶は記憶として残しつつ、それに振り回されない状態を作ることが大切です。これが、私たちが目指す「脳から消す」という状態の本質なのです。
私たちの脳には、「忘れない」ための驚くべき仕組みが備わっています。昼間に体験した出来事は、夜の静かな時間に整理され、眠っている間に記憶としてしっかりと定着していきます。
さらに脳は、似たような記憶同士を結びつけ、まるでリンクを張るように互いをつなげていく。このような「忘れない仕組み」は、人類が生き延びていくために欠かせない機能でした。
危険な場所や警戒すべき相手を忘れないこと。
重要な経験を確実に記憶に留めること。
それらの記憶を組み合わせて新しい状況に対応すること。
こうした能力があったからこそ、私たちの祖先は様々な危機を乗り越えて生き延びることができたのです。しかし、現代社会において、この記憶システムはときとして過剰に働きすぎてしまいます。