タワマン増加地域で「教室が足りない」
生徒が多すぎて小学校の教室が足りない……。
こんな光景を昭和・平成のテレビ映像で見たことがある人も多いのではないだろうか。
少子高齢化が進んだ令和の現在では幻だと思うかもしれない。しかし、現在でもこんな光景が広がる場所がある。
そのひとつが、埼玉県さいたま市南区にある武蔵浦和。武蔵野線や埼京線が乗り入れるこの駅周辺では大規模な再開発が進められており、8棟のタワーマンションが建設されている。これによって若い世代が大量に流入。
駅周辺にある5つの小学校のうち、1つは全校児童数が1200人に達し、クラス数は40になる。これは国が求める小学校定員の基準値を大幅に超えている「過大規模校」(一校あたり31学級以上)。まさに「教室が足りない」状況が起こっている。
こうした課題を解決するもっとも手っ取り早い手段は「小学校の新設」。
実際、タワマンの増加とそれに伴う子どもの人口増加に伴って、小学校を新設した事例もある。
東京都港区芝浦。臨海部にタワーマンションが林立し、“高所得者層の象徴”のようになっているこの街に、26年ぶりとなる小学校が誕生した。
その名も芝浜小学校。JR田町駅から歩行者用デッキで直結している校舎は9階建て。小学校も「高層化」しているのがおもしろい。中には温水プールや屋上運動場、ボルダリングウォールなどの屋内施設も充実していて、次世代の小学校として注目を浴びている。
芝浜小学校が開校したのは2022年。この近隣には「芝浦小学校」があったが、港区の海岸地区の子どもの人口が急激に増えたことにより、定員を大幅に超えてしまった。2010年度には550人だった児童数が、2022年度には1255人になったのだ。
そこで新設されたのが、この芝浜小学校である。
背景には、港区の急激な人口増加がある。同区はタワーマンションなどの増加により、人口増加の一途をたどっている。都が発表している「港区人口ビジョン」によれば1996年からこの増加傾向は続き、1996年からほぼ2倍近い人口に。また、人口推計によれば、年少人口だけでも今後10年で5000人近くの増加が見込まれている。
26年ぶりの小学校新設ということもあって、芝浜小学校は開校時に大きな注目を浴びたが、それから2年、実際に学校の運営はどのようになっているのだろうか。
同校の宮﨑直人校長によれば、創立時の児童数は377名だったのに対し、2024年度の児童数は644名。たったの2年で1.7倍の増加である。
全国平均では、毎年1.5%ずつ児童数が減少しているのが現在の日本の小学校だ。それとは正反対の推移をたどっていることになる。
彼らの通学手段は徒歩であり、周辺のマンション増加に伴った結果といえる。