パリコレとトレードショーの違いについて

林田さんはまず、公式コレクションいわゆるパリコレとトレードショー(商談や見本市としても利用される非公式のショー)との決定的な違いについてこう話す。

「一般的に観客席が販売されているショーはトレードショーであり、公式コレクションではありません。文字通りトレードショーですから、その場で商談も行なわれています。

一方、公式コレクションでは、挨拶程度のやりとりはあっても、具体的な商談は後日行なわれます」(林田さん、以下同)

彼女は、パリコレやミラノコレクションといった公式コレクションと、トレードショーは本来の目的が異なると語る。

「公式コレクションのオーガナイザーは、たとえ気に入ったモデルであっても、正規のモデルエージェントを通さなければ起用はしません。観客もバイヤーやVIP、記者など限られた関係者のみで、一般の観客は入場すらできないのです」

そもそも、公式コレクションが行われるようになったのは、次シーズンのトレンドを示すことや、世界的な映画祭のレッドカーペットで着用されるような高級ドレスの紹介が主な目的であり、商業よりも文化的意義が高い。それらをふまえたうえで、長年取引関係にある富裕層へアプローチし、直接商業につなげていた、という。

「超高級ドレスを貸し出す役割も担い、デザイナーの服が実際にどれだけ注目をあつめられるか、そして売上につながるかを厳しく審査しています。お金を払えば出場できるわけではなく、実績やプレゼンテーションのレベルが低い場合は、たとえ有名ブランドであっても参加を断られます」

ミラノのショーでの林田季子(本人提供)
ミラノのショーでの林田季子(本人提供)
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さらに林田さんは、公式コレクションは「モデル」ではなく「服」が主役だと指摘する。

「モデルの仕事は、自分自身のためではなく、ショーやブランドのために存在するもの。つまり、ドレスのために人間が存在しているのです。

身長の基準は、女性で178cmから185cm、男性で185cmから195cm程度が最低ライン。骨格も重要な判断基準の一つです。したがって、公式コレクションに出るには、アジア人の平均身長ではまず無理。177cmの私でさえ『低い』とされてしまう世界なのです」