母が、息子の子どもを妊娠するケースも
──小西さんはなぜこのようなサービスに携わることになったのでしょうか。
2019年頃、私が祖母の介護をしていた経緯から、福祉領域に興味を持つようになり、その一環で障がい者のグループホームに見学に行きました。
その際、「(障がいのせいで)何をしても楽しくないと話す方がいる」という話を、支援者の方から聞きました。私は風俗店に在籍していた過去もあったので、「女の子と遊んで発散したっていいのでは」と思っていたんです。
ただ、調べていくうちに、障がい者を受け入れる性風俗店が限られている現状を知り、性的サービスを提供したいと思うようになりました。その後、私自身が障がい者専門の風俗店のキャストとして勤務するようになったんです。
──実際に働き始めていかがでしたか?
働き始めて数ヶ月が経った頃、とある疑問を感じました。利用客の大半が身体的な障がいを抱える方ばかりだったのです。逆に言えば、重度の知的障がいを抱えている方など、情報にアクセスできない人が水面下に多数いるのではと感じました。
そこで、懇意にしていた介護教員の先生に相談したところ、「知的障がいを抱えた息子の性処理をお母さまが行なっている」という衝撃的なケースを聞きました。
しかも息子さんが感覚過敏だったために、コンドームを途中で外してしまい、過去に息子さんの子どもを妊娠した経験もあると聞きました。
お母さまからしたら、息子の性欲を発散しなければ、どこかで息子が性犯罪にはしってしまうかもしれない……そう懸念され、悩みを相談できる場もなかったそうです。
この話を聞いたとき、より幅広い支援ができないかと、2020年9月に現在の風俗店を開業しました。
──障がい者の方のご家族や支援者から依頼を受けることもあるのでしょうか。
はい。ご家族からの依頼で問題の深刻さを感じるのは、当事者のお姉さんや妹さんからの相談が集中していることです。障がいのある兄弟の性について理解をしたくても、どこまで踏み込んでいいのか分からないという声が多いです。
今年2月に発表された、私の経験談をベースにしたセミフィクション漫画『障がい者専門風俗嬢のわたし』内で、重度の知的障がい者である弟を持つ姉から「思春期の弟が自慰行為のようなことをしている」と相談が寄せられているエピソードがあります。
ソーシャルワーカーに相談しても具体的な回答を得られず、ほかの家族も気のせいだと見て見ぬふりをする。
上記はセミフィクションですが、実際に障がいを持つ家族の性処理について葛藤する家族がいるのは事実です。家族間で距離が近いからこそ性欲がある現実を直視したくないとか、理解してあげたいけど介入の線引きが分からないとか、性処理をしたら家族である関係が壊れてしまうなどなど…。
こうした葛藤を抱える家族の受け皿が少ないのも現実で、当店がその一助になれればと願っています。
【漫画】『障がい者専門風俗嬢のわたし(シリーズ立ち行かないわたしたち)』
【漫画】『障がい者専門風俗嬢のわたし(シリーズ立ち行かないわたしたち)』第3話を読む(漫画を読むをクリック)
取材・文/佐藤隼秀 写真/本人提供