明徳義塾と馬淵監督の不気味さ
一方で、明徳義塾はバッテリーを含め4人が昨夏の甲子園を経験。試合巧者ぶりと選手個人の能力を兼ね備えている点が特徴だ。
とくにエースの池崎安侍朗は、派手さはないものの安定したピッチングを見せる。馬淵監督も「(健大高崎との試合は)池崎の調子次第ですよ。健大高崎と当たるんだったら池崎しか考えられない。彼がどれくらいやれるか」とコメントするほど信頼を寄せる。
その馬淵監督は昭和・平成・令和の3時代にわたって監督を務め、社会人野球でも実績を残しており、その采配やマネジメント術の巧みさは高校野球ファンならよく知るところ。チームビルディング、選手育成、戦術面において「高校野球の教科書」とも言える戦い方を貫き、甲子園で結果を残してきた。
チームづくりは、計算しやすい制球力のある投手の起用を優先し、野手はスラッガータイプよりも機動力のある選手を重視する。守備にリズムが生まれれば、打撃にもいい影響を与えるという考えだ。また、野手はまず守備を鍛え、その上で1番・3番打者タイプの育成をすることも特徴だ。
走力や選球眼、出塁率の高い選手を育てる方針を取っていることから、中学生のスカウト活動も、パワーよりもバランスのよさ、足の速さに重きを置き、派手なプレースタイルよりも安定したディフェンス力を軸にしたチームづくりを行う。
この守備重視の戦略は、短期決戦の高校野球において非常に合理的だ。プロ野球と異なり、高校野球では緊張やプレッシャー、慣れない球場などの影響でミスが出やすいため、失策を最小限に抑えることで勝率を上げられるからだ。
チーム運営の面でも統制を意識しており、同じ能力なら上級生を優先する。キャプテンは監督が独断で決めるのではなく、上級生の投票によって決定される。選手主体のチーム運営で監督と選手が歩調を合わせて戦う体制が確立していることは、明徳義塾の強さを支えていると言っていいだろう。
いきなり昨年のセンバツ覇者の健大高崎との対戦となるが、相手への徹底的な分析から初戦の強さは甲子園の歴史の中でも歴代屈指だろう。試合前の対策を含め、初戦の馬淵采配は見逃せない。