「浅草ラプソディーの巻」(ジャンプ・コミックス53巻収録)

今回は、両さんが中川と麗子を伴って浅草寺に初詣に行き、その足で実家に寄るお話をお届けする。

道楽息子の帰還に、たちまち起こる大騒動……となれば、まるで映画『男はつらいよ』の世界だ。本作は『男はつらいよ』もかくや、という、下町人情コメディーをたっぷりと楽しめる一編だ。

両さんの実家は、浅草の花街・新吉原がある千束(せんぞく)で長く続いている佃煮屋だ。そして両さんの父・銀次は、飲む打つ買うの三拍子が揃った道楽者だ。「この親にしてこの子あり」だな、と納得がいってしまう。

なお、両さんは、警察に奉職して以降、長いこと実家に帰っておらず、初期『こち亀』においては、ほぼ親子の断絶状態になっていた。それが、次第に浅草を舞台にしたエピソードが登場するようになった理由については……。

『こち亀』の作者、秋本治先生は亀有で生まれ育ったが、子供の頃、運送業を営む親戚の車で、上野や浅草といった繁華街に繰り出すことがあったそうだ。

なかでも夜中に浅草の初詣に向かった際には、浅草の喧噪と明るさにたいそう驚いたという。秋本少年にとって、浅草は眩しい都会でありつつも、馴染みのある地だったのだ。

そこで、両さんの故郷という「亀有以外の土地」を浅草に定めたということらしい。

ちなみに、はじめて浅草を舞台にしたお話は「ふるさとは遠かった」(ジャンプ・コミックス第7巻収録)。こちらもぜひ一読をおすすめする。

「ふるさとは遠かった」より。実家の前まで来たものの、このときはついに顔も出さずじまい!
「ふるさとは遠かった」より。実家の前まで来たものの、このときはついに顔も出さずじまい!

それでは次のページから、両さんと一緒に正月の浅草散策をたっぷりとお楽しみください!!