JAの踏み込み不足も要因か?
こうした転作支援を見直すことで、今後コメは輸出による拡大を目指すことになる。
政府は2017年に「コメ海外市場拡大戦略プロジェクト」を立ち上げ、戦略的輸出事業者が海外開拓に取り組む支援を行なってきたが、戦略的輸出事業者には輸出目標が課されており、そのトップに立っていたのがJAだ。
日本のコメはその品質の高さが海外でも評価されているうえ、アメリカでは日本食ブームが重なっていることもあり、輸出量は伸びている。しかし、日本国内でのコメの価格が維持されてきたために、多くの農家が輸出に前向きになれなかった歴史がある。
日本のコメを輸出するにあたって、一番のボトルネックになっているのが現地の消費者や事業者から見た価格の高さだ。政府は輸出用米にも補助金を出しているが、それでも国内の主食用米と比べると農家にとっては金額が安い。
輸出用米の生産は、生産者にとってモチベーションが上がらないのが現状だ。
本来であれば、戦略的輸出事業者のトップであるJAが農家に対して輸出の重要性や目的、理念を理解してもらい、このビジネスに参入する輪を広げなければならなかったはずだ。
しかし、コメを取り巻く既存のビジネスモデルを壊すことができなかった。こうしたところに旧態依然とした体質が残っているように見える。転作支援の見直しで国内でのコメの価格が下がれば、輸出量の拡大にも拍車がかかるはずだ。
そうした新しい挑戦こそ、JAの腕の見せ所になる。
取材・文/不破聡 写真/shutterstock