コメ高騰下で「米価の低迷を招く」という農相のあきれた意見
減反政策が廃止された後の2019年1月、コメの業者間取引である相対価格は1万5709円で前年比0.7%の増加だった。2020年も0.7%の微増。
2021年に価格は下落トレンドに入るが、これは減反政策というよりもコロナ禍で需要が緊縮したことによるものだ。その後、2025年には未曽有のコメ不足に襲われて価格は前年の1.7倍となる2万5927円にまで高騰した。
減反政策後も価格が維持されていた要因の一つが、飼料用米の生産に対する「財政支援」だ。水田を活用して飼料用米や米粉用米を生産する農家に対し、転換した面積に対して一定の交付金を手渡した。
これにより、2023年の主食用米の水稲作付面積は124万ヘクタールで、2018年比で10%減少した。一方、飼料用米等は20.4万ヘクタールであり、1.6倍近くまで拡大している。
これが、前述した“実質的な減反政策”と呼ぶゆえんだ。

同じ農地でそれまで生産していた農作物とは違う種類の農作物を生産する転作の支援金は、2024年から飼料用米の内、一般品種への支援水準が段階的に引き下げられることが決まっている。
これには多収な専用品種への転換を促進する狙いがあったが、裏を返せば、転作自体を支援する姿勢は崩していなかった。これに対して、財務省は、2025年度予算に対する意見書をまとめ、2027年産以降は飼料用米を助成対象から外すよう求めた。
自立した産業への構造転換を目的とした主張で、減反政策の趣旨を考えればまっとうな意見というべきだろう。
しかし、江藤拓農相は2024年12月6日の参院予算委員会にて、助成の引き下げは「まったく考えていない」と答えた。農家が主食用米の生産に動くことで、米価の低迷を招く恐れがあることがその理由だという。
実際、コメの高騰は2024年夏には始まっていた。すでに国民はインフレ下で食品価格高騰の犠牲者になっていたが、コメの値上がりは、ダメ押しするかのように庶民の生活を徹底的に圧迫した。
それにも関わらず、コメ不足を招いた元凶である実質的な減反政策を、「米価の低迷を招く」という理由で退けようとしたのだ。
結局、コメの価格高騰を受けて、転作支援を見直す方針を明らかにしたのは、2025年1月末のこと。コメの価格が深刻化して、ようやく本丸に切り込んだというわけだ。