昔は20人ほどコメ農家がいましたが、今残っているのは4人
今、スーパーに並ぶ10キロ8000円台というコメは、消費者からすれば以前の2倍の価格帯だ。これについてAさんはこう語る。
「お米を好きで食べているみなさんには申し訳ないですが、今の価格帯5キロ4000円~4500円でようやく私らはやっていけるって感じなんです。たしかに倍くらいに高騰していますが、元々が安かったんですよね……。私は実家が農家でコメ作りにはずっと関わってきていていますが、とてもじゃないけどコメ農家だけでは生活できませんよ。
ウチの田んぼは1ヘクタールにも満たない約80アールで、1年間に130俵(7800キロ)ほどのコメがとれます。それを家族や親戚で食べる以外はすべてJAに出してきましたが、JAから振り込まれるのは12万~13万円ぐらいのもんでしたよ」
1年間の重労働の対価が15万円にも満たないともなれば、生活が成り立たないレベルでは済まない。
「田んぼを維持するために諸経費もかかりますから実質はマイナスなんです。当然コメ専業では生きていけないので私は会社員として働きながらコメ農家をしていました。かれこれ20年近く、定年退職するまでは土日やゴールデンウイークなどの連休を利用して田んぼの手入れをしていたので、本業の会社勤めに支障は出ませんでした。
田植えと稲刈りの時期だけ3日ほど休みをもらうことはありましたが、ほかの仕事との両立はできるんですね。実際に田んぼは赤字ですから会社員として働くことは重要でした。毎月の給料からコメ作りのためにお金を持ち出してやっていたわけです。
今は年金で生活していますが、年齢的にも田んぼはあと6、7年しかやれないかなと思っています。息子がいますが、とてもじゃないけど『コメ農家を継げ』なんて言えません。ウチの近所には昔は20人ほどコメ農家がいましたが、今残っているのは4人。しかも、全員が兼業農家です。それほど割にあわないコメ農家を自分の息子には勧められませんよ」