最低賃金の国政課題化
二〇〇六年から二〇〇七年にかけては、それまでの構造改革への熱狂が醒め、格差社会問題が大きく取り上げられるに至り、その関連で最低賃金が国政の重要課題となるに至っていました。既に二〇〇六年から官邸に再チャレンジ推進会議が設置されていましたが、そこではまだ最低賃金への言及はありませんでした。
しかし、二〇〇七年二月一六日の経済財政諮問会議で了承された『成長力底上げ戦略(基本構想)』では、人材能力戦略、就労支援戦略と並ぶ中小企業底上げ戦略の中において、「生産性向上と最低賃金引上げ」を政策目標として打ち出しました。
そこでは、官民からなる成長力底上げ戦略推進円卓会議を設置し、「生産性の向上を踏まえた最低賃金の中長期的な引上げの方針について政労使の合意形成を図る」ことが明記されたのです。
この円卓会議で六月二〇日にまとめられた『中小企業の生産性向上と最低賃金の中長期的な引上げの基本方針について(円卓合意)』は、「働く人の格差の固定化を防止する観点から、中小企業等の生産性の向上と最低賃金の中長期的な引上げの基本方針について、今後継続的に議論を行い、各地域の議論を喚起しながら、年内を目途にとりまとめる」としました。
その上で、「最低賃金法改正案については、上記の趣旨に鑑み、次期国会における速やかな成立が望まれる」と述べ、「中央最低賃金審議会においては、平成一九年度の最低賃金について、これまでの審議を尊重しつつ本円卓会議における議論を踏まえ、従来の考え方の単なる延長線上ではなく、雇用に及ぼす影響や中小零細企業の状況にも留意しながら、パートタイム労働者や派遣労働者を含めた働く人の『賃金の底上げ』を図る趣旨に沿った引上げが図られるよう十分審議されるように要望する」と、かなり踏み込んだ見解を示しました。