新卒一括採用で失敗したら復活できない

例年同じ期間に新卒の学生を一定数採用する「新卒一括採用」は、日本独自の特殊な仕組みである。経団連による新卒一括採用の決まりに則り、企業は体面上、他社との足並みをそろえながら採用活動を行う。

一方で海外は基本的に通年採用であり、年齢は問わず職歴・学歴を重視されることが多い。

他国と比べると、日本は「みんながだいたい同じ年齢で大学を卒業し、そのまま会社へ就職する」という変わった国なのである。逆にいえば、新卒はある程度の学歴を有することで、就活で大企業へチャレンジするチャンスもある。これを、就活界隈では「新卒カード」と呼ぶ。

新卒就活でうまくいい会社に就職できたなら、将来は安泰である可能性が高い。だが、チャンスに恵まれず就活に失敗してしまった場合、その後の立て直しが非常に難しいともいえる。たった一度の選択かもしれないが、今後の人生全体に大きく影響をおよぼすのだ。

そもそも正社員転職率はわずか7.6%(20〜50代の平均)であり、徐々に変化の兆しはあるものの、海外と比較すると転職する文化がそれほど広く国内に浸透していない。さらに、企業規模がより大きい企業へ転職できた者は、全体の33.8%しかいないのだ。

近年では起業やアーリーフェーズのベンチャー企業など、規模の小さい企業へ転職するケースもあるため、一概に大手への転職が「成功」とは限らない。しかし、新卒で大手からの内定を望んでいたものの玉砕し、転職で大手に返り咲くこともできない人も一定数存在するといえよう。

大手企業では2020年4月から、中小企業では2021年4月から「同一労働同一賃金」が適用されている。

非正規雇用と正規雇用との不合理な待遇差が解消され、同じ業務内容であれば同じ賃金となり、多様な働き方を自由に選択できるようになった。だが、一度非正規雇用のルートに乗ってしまうと、「ずっとサポート職をやっていた人」「同じ仕事内容ならそのままの雇用形態でも問題ない」とみなされ、望んでいるにもかかわらず正規職ルートに戻りづらくなるケースもある。

特に30代以降になると、マネジメント経験がないことが大きな壁となり、正社員へステップアップするチャンスを失ってしまうのだ。また、給与額の高い・低いに関しては、正規・非正規といった雇用形態以外にも、業界によって左右されやすい特徴がある。

年収が低い業界の例 図/書籍『弱者男性1500万人時代』より
年収が低い業界の例 図/書籍『弱者男性1500万人時代』より
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もし新卒で給与が低い業界へ就職した場合、キャリアをリセットして短期的な年収ダウンを受け入れ他業種へ転職するか、転職せずにその場で耐えるかになってしまう。

他業種でも同じ職種であれば多少はキャリアを生かせるかもしれないが、未経験業界に足を踏み入れることへの不安はあるだろう。

新しい環境に順応できるかどうかと迷い、なかなか転職への勇気が出ず、望まぬ環境に耐える人も少なからずいるのだ。