家の中で「誰がどこに座るか」は細かく決まっている
日本の古い家屋でもかつてはそうだったと思いますが、アイヌの家では誰がどこに座るかが決まっていました。『ゴールデンカムイ』6巻49話には、キロランケの家を杉元やアシㇼパたちが訪問した時の光景があり、画面の左の方が入口になります。
入口から見て囲炉裏の左側の奥にキロランケが、手前に奥さんが座っています。どこの家でもこれが家の主人と主婦の定位置です。こちら側をシソ「右座」といいます。
アシㇼパがいる側がハㇻキソ「左座」です。ここは子供たちの座る席です。男の子が奥の方、女の子が入口側の方に座ります。そして、普通はお客さんもこの左座の方に座ります。
アシㇼパの右に立っている子は女の子に見えるかもしれませんが、男の子と女の子の髪型に違いはありませんので、どっちだかわかりません。男の子だとすれば、アシㇼパより奥にいるのも不思議はありませんし、アシㇼパはこの家ではお客さんということで、お客さんの定位置にいるのかもしれません。
杉元と白石が座っている囲炉裏の奥側の席は、ロルイソあるいはロルンソ「横座」といって、長老格の人が座る場所であり、夫婦と子供たちだけの場合はここには誰も座りませんし、普通の客もここには座りません。勧められもしないのに客がここに座ったら、へたをすると追い出されます。特別なお客さんの場合にだけ通される席なので、杉元と白石は特別待遇ということですね。
右座も左座も横座に近い方が上座です。そして男性は上座側に、女性は入口に近い下座側に座ることになっていました。
8巻73話ではアシㇼパがフチのお姉さんの家を訪れていますが、ここではフチのお姉さんが家の主人の席に座っていて、アシㇼパが奥さんの席にいます。親戚なのでホスト側の席に座っているということでしょう。そして杉元と白石が通常のお客さんの席に座っていて、キロランケが特別待遇ということですね。
こんなふうに、座る場所だけでその人がその状況でどのような立場にあるのかがわかります。