トイレは、家に対してヌサ(注:幣柵。カムイを祀る祭壇)とは反対の方向――つまり日高地方や胆振(いぶり)地方ではチセ(家)の北西側に、少し離して建てられます。家に対して、道をはさんだ向こう側に建てるものだという記述もあります。
『ゴールデンカムイ』6巻49話で、杉元と白石がトイレに行ったついでにか、あるいはトイレに行くふりをして、出会ったばかりのキロランケについて評定(ひょうじょう)をしている場面があります。
そこでは男性用のトイレと女性用のトイレが並んで描かれています。男性用の方が家に近い位置にあり、家のような屋根がついていますが、女性用は三角の仮小屋のような形になっています。
ここでは男性用と女性用がほぼ並べて建てられているように見えますし、各地のアイヌ関連の施設でモデルハウス的に建てられた昔風の家でも、だいたいこんな感じで配置されていますが、それはスペースの関係によるもので、資料に基づけば女性用は男性用よりさらに4、5メートル離して建てられることになっています。けっこう離れていますね。
千歳(ちとせ)地方では、この男性用と女性用の間に穴が掘られていて板が渡してあり、それが子供用のトイレだったという話も聞いています。子供用のものには覆いは何もありません。足を踏み外して落ちてしまってもすぐにわかるように、何も囲いをしていないのだという話でした。