宝物を奪う「戦い」の物語
物語や伝説の中では、このイヨイキㇼ(宝壇)の宝物を奪うためにトパットゥミというものが襲ってくる話がたくさんあります。
トパットゥミというのは、トパㇻとトゥミという言葉からできていて、トゥミは「戦い」なのですが、トパㇻという言葉は日常会話ではあまり使われません。しかし、知里真志保の『地名アイヌ語小辞典』には「topar(忍びの術)tumi(戦)」と書いてあり、これがどうも語源のようです。
「忍びの戦」という名前のとおり、トパットゥミは夜やって来ます。そして人々が眠っているところを襲って、赤ん坊にいたるまで皆殺しにして、シントコなどの宝物を奪って行くのです。そして、物語の中では必ず子供か赤ん坊が生き残っていて、成長してから復讐を遂げるという展開になります。
神窓からイヨイキㇼのあたりは、お祈りなどの用のない限り、普段歩き回るところではありません。特に、右座から左座、あるいは左座から右座に移動する時に、横座を通り抜けてはいけません。昔は研究者でもそれをやって怒られている人がいました。
反対側の席に行きたい時は、必ずウトゥㇽ「火尻座(ひじりざ)」、つまり入口の方を回って移動しなければならないことになっています。
ちなみに、人が座っているところを通る時には、その人の後ろを通ってはいけません。近年ではそういう習慣もなくなっているようですが、本来は座っている人の前を通るのが作法です。
囲炉裏の近くに人が座っている場合には、その前は通りにくいわけですが、その時は座っている方が後ろに下がって、前を通してあげなければいけないことになっています。