お酒は去年ぐらいに、ふとやめてみた
──この本に、お酒との付き合い方が変わったという話が、出てきますよね。
奥田民生(以下同) うん。この何年かで、そんなに量が要らなくなってきている気はしてたんですよ。「たくさん飲んでも、だからなに? 酒が残って疲れるだけよね、次の日」みたいな。
それで去年ぐらいに、俺は休肝日がないな、と思って、ふとやめてみたんです。そしたら、5日ぐらい飲まないでいられたのよ。それで「あ、なしでいけるんだ」って気がついたら、晩酌しなくていい日ができるわけよ。自然に「飲んでないけどこのまま寝よう」みたいなことが、前よりもできるようになった。飲む日も、酔うのが早くなったから、たくさん飲まなくていいし。
──かたや、タバコは続けていますよね。1995年の「たばこのみ」という曲で「誰が何と言おうと たばこを愛してる」と宣言された通り。
うん。タバコとアイコスを併用して。
──世の中的に吸うのが大変になって、もうやめた方がラク、というのは……。
あるある。ほんとは、ここ一番で1日2本ぐらい吸ってりゃあ、幸せで健康なんじゃないかと思うんだけどね。それができたらいいけど、(音楽制作の)作業をしてるときに、どうしても流れで吸っちゃうから。それはアイコスでごまかす、みたいな感じですよ。
──それにもかかわらず、喉は丈夫ですよね。最近、40代から50代のボーカリストのライブに行くと、「今日は高音域、ちゃんと声が出るかな」という視点で観てしまうことが多いんですが、民生さんのライブでそういう心配をしたことは一度もない。酒好きだし、喫煙者だし、喉のケアをしているようにも見えないのに。
まあ確かに、なにもしてないよね。でも、歌い方が、若いときと変わっていると思うんですよ。なんというか、手ぇ抜いてんのよね(笑)。手ぇ抜いてるっていうとあれですけど、うまいことやる、そのやり方がわかってきたんですよ。
──喉を消耗せずに、大きくていい声を出せる方法がわかってきた。
50になった頃から、ガーッと力を入れて、「腹筋、大事です!」みたいな歌い方じゃなくても、「あ、この方法なら、むしろ高い声出るやん」っていうのが、わかってきて。
ライブが2日続いたりすると、喉はやられるし、そうなると昔より治りも遅いけど。でもまあ、できてるね、今のところは。だから、酒とかタバコが喉に悪いとは、一回も思ったことがないね。