1億人を喜ばせようという「業」のようなもの
まず、率直に今回のサザンの「夏フェス卒業」をスージー鈴木氏はどう受け取ったか。
「初めに聞いたときは8月と勘違いして(『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』は今年、8月と9月の2回行われる)、一大事と思ったら9月だったから、暑さ的にはまだよかったと思います。僕は桑田佳祐が1956年生まれということを念頭において活動を見ているんですが、もう68歳ですからね。精力的に動いていますが、あまり無理はしないでほしいというのが、ファンとしての正直な気持ちです。
サザンは2009年に一度、音楽活動を中断する話が出て、大騒ぎになったことがあります。ロックミュージシャンが徐々に高齢化していて、アルバムが数年に一枚のペースになったり、活動がゆっくりになっていく中で、今から考えると適切な判断だったと思います。
サザンのライブを見ると『この人たちは本当にライブが好きなんだな』という感動と、1億人を喜ばせようという「業」を感じます。ビジネス的な要請もあるかとは思いますが、年齢的にも規模をあまり大きくしすぎず、小さいホールも含めた、いい感じのバランスでライブ活動をやってもらえればと。今年で夏フェスが最後だから、不安だ、どうなるんだろうってあたふたしてるファンはあまりいないんじゃないですかね」
デビューから46年、一線で活躍を続けてきたサザンだが、もちろん長い歴史にはいくつかの節目があった。
前述のツアー中断もそうだし(再開したのは2013年、以降はサザンか桑田佳祐のソロでほぼ毎年ツアーを行なっている)、2010年には桑田の食道癌の手術もあった。
その後、ファンの不安を払拭するように、2013年にシングル「ピースとハイライト」が発表された。社会への不安や希望を歌った同作は、桑田らしいウィット抜きのストレートな歌詞が一部で話題となったが、サザン復活を告げた作品だった。
「僕はこの曲がすごく好きなんです。“メッセージソング”という人もいるけど、その言葉から想起されるような、切先鋭いものではなくて、押し付けがましくなくて、あっけらかんと歌っている。MVもコントみたいですし。メッセージソングといえば、去年は『Relay〜杜の歌』で神宮外苑のことも歌っていました。国民的バンドが社会情勢を歌うのは、気持ちがいいなと思います。もっと若い人たちもやればいいのにと思う。
あの(『ピースとハイライト』発売時の)騒ぎは、いかに世間がサザン・桑田の音楽を聞いていなかったかの現れですね。もっと鋭いメッセージ・ソングもいくつかあったし、1982年の紅白でやんちゃしたりとか、昔の方がヤバかったのに、なんでそれを忘れているんだろうと思った記憶があります」