竹下佳江と共通するセッターとしての素質

――そもそも松永さんが思う「いいセッター」「日本代表へ行かせたい」と思った基準は何でしたか?

僕は現役時代、パナソニックパンサーズ(現大阪ブルテオン)から豊田合成トレフェルサ(現ウルフドッグス名古屋)へ移籍するまでの半年間に、日本代表で女子のコーチを務めたんですが、竹下佳江さんにトスを上げてもらってボールを打っていたんです。

全体練習後、僕もまだ現役だったので、女子のネットの高さを男子のネットの高さに張り替え、自分でトスを上げてスパイクを打っていたら、当時の女子日本代表セッターだった竹下さんが「手伝うよ」と声をかけてくれたんですよ。

ネットの高さも違うので、最初は欲しいトスを伝えてもなかなか合わなかったのですが、何度か伝えたらすぐ「これだ」というトスが上がってきた。

アタッカーからすれば、ただ打てるだけでなく、好きなコースや場所に打てる。まさに理想のトスです。しかも、ただ求める場所に来るだけでなく、トスを出すタイミングも含めて、あんなに打ちやすいトスはなかった。

それまで「名セッター」と言われる方々のトスを打たせていただく機会はたくさんありましたが、あの時に竹下さんが上げてくれたトスが、僕にとっては一番打ちやすかった。

その数年後、大学で選手たちに見せるためにスパイクを打つ時、誠大にトスを上げてもらったんですが、その時の感覚もまったく一緒でした。

竹下さんも誠大も、普段の練習から“同じポイント”を大事にして練習しているんです。投げてもらったボールを、ジャンプして1本1本セットする。何でもない練習に見えるかもしれませんが、そういう積み重ねがあのトスにつながっている。

身長ではなく、「こういう選手こそがいいセッターであり、日本代表へ行かせたいセッターだ」と思い続けていました。

関田誠大、石川祐希、髙橋藍らを育てた松永理生監督(写真/アフロスポーツ)
関田誠大、石川祐希、髙橋藍らを育てた松永理生監督(写真/アフロスポーツ)

――周囲の方々に関田選手について聞くと、必ずといっていいほど「とにかく練習していた」と聞きます。大学時代も同じだったんでしょうか?

その通りです。全体練習がどうこうではなく、体育館に着いたら自分のタイミングでトスを上げ始めていたし、ボールに触っていない時間がほとんどなかったと思いますね。

僕も中大へ入る前の誠大を知る方から、「あいつは河川敷でもトス練習をする選手だ」と聞いていたのですが(笑)、「本当にその通りだ」と思わされるほど本当にストイックな選手です。