キョン解体の手順
千葉県大多喜町の解体処理施設でキョンやイノシシなどの解体処理に携わる野崎安里さん(35歳)は、「キョンは体が小さいので、解体作業にはかなり繊細な手捌きを必要とします」と言う。
「私は10数名の猟師さんとお付き合いがありますが、猟師さんから『罠にかかったよ』と電話が来たら現場に急行し、止めさし後の個体を引き取ります」(野崎さん)
個体を引き取って施設に戻ったら、できるだけ早く、遅くとも2時間以内に内臓を取り出し、専用の冷蔵庫で2日間熟成。その後、もも肉、ヒレ肉、ロース肉の3種類に精肉する。1体から取れる肉は、わずか2キロほどだという。
手際よく次々と作業する野崎さんに、「解体中は何を考えているのか」と声をかけてみた。すると、「最初のころは『ごめんね、ちゃんとおいしく食べられるようにきれいに解体するよ』と思いながら作業をしていましたが、今ではほとんど無心です」と答えてくれた。
キョンの小さい体の中から内臓が出てくる中でも、顔色を一切変えず、淡々と作業を続ける野崎さん。内臓に明らかな異常がある場合は廃棄するそうだが、そんなケースは「ほとんどない」という。