「人ではなくキョンの市にしたらどうか」というびっくりクレームも
キョンの見た目は確かにかわいらしい。まるでバンビのようで、つぶらな黒い瞳をしている。千葉県いすみ市に別荘を持ち、ここで週末だけ過ごすという60歳の女性は言う。
「娘や息子家族が遊びに来たときにバーベキューをしていると、キョンが現れることがあるんです。小さな孫たちはそれを見て喜ぶし、キョンはこちらから近づかなければ逃げないので、微笑ましく見てるんですよ」
しかし、かわいいだけではない。
「キョンは昼夜とわず現れて庭の花もみかんの葉も食べちゃうから、庭が寂しくなるけど何もやらなくなりました。動物も生きていくためにしかたがないとはいえ、もう少し全体の数が減れば悪さも少なくなると思うけど……」(同)
もちろん自治体も手をこまねいているわけではない。千葉県環境生活部自然保護課鳥獣対策班は県内から野生のキョンを完全駆除すべく、毎年8500頭の駆除を目標に活動している。しかし、このような取り組みがテレビのニュース番組などで報道されると、たちまち一部の動物保護派からクレームが殺到した。
県内のとある市役所関係者は言う。
「昨今、クマ駆除のニュースが流れるたびに『クマがかわいそうだから殺すな』という非難が自治体に集中するのと同じですよね。こちらにもキョンに関するクレームが一日中ひっきりなし鳴りやまないこともあり、『キョンを捕獲して動物園をつくればいいじゃないか』『人間ではなくキョンの市にしたらどうか』とか突拍子のないことを言ってくる人もいます。ですので、キョンに関する取材は猟友会も含めて基本的に受けていません」