昨年の花粉量が少なかったことが影響か
このところ毎年のように大量発生しているカメムシだが、実は今年はちょっと傾向が異なる。
昨年は真夏にイネ類を餌にする「斑点米カメムシ」が多発してコメ農家を困らせたが、今年は果樹カメムシ類が春先から大量発生し、果樹農家を絶望のどん底に叩き落としているのだ。
農林水産省の「病害虫発生予察情報」によると、今年のカメムシ注意報は3月22日に愛媛県で発令されたのを皮切りに、4月には神奈川や鳥取、山口、和歌山、高知、徳島と幅広い地域の6県に広がり、5月に入ると九州から四国、近畿、北陸、関東の各府県で連日のように発令。
21日にはとうとう農業のイメージとは縁遠い東京都でも発令された。対象作物はビワやモモ、キウイフルーツ、かんきつ類、ナシ、ブドウ、カキなど果樹全般に及ぶ。
このうち、例年さまざまなカメムシの被害に見舞われている高知県農業振興部は「こうち農業ネット」というウェブサイトで、被害状況や対策の発信を行なっている。担当者に詳しく聞いてみた。
——今年はどんな被害が出ていますか。
カメムシは口が針状になっていて、刺したところから果実が腐敗していくため、商品として出荷できないレベルになります。とくに今の時期はビワの被害が多発していますね。
ビワは袋をかけて育てるのですが、袋の隙間からカメムシが侵入し、果実を吸って腐らせたり、へこませたりするので商品にならないんです。
ビワだけでなくミカンやモモ、ブドウにも被害が広がっていて、ふだん農薬散布していないエリアでも、今年はしているところが多いです。
また、農家だけでなく、一般の家庭からも「家にカメムシがたくさん飛んできて困る」という相談が多く寄せられています。
——今年もまたカメムシが増えた原因はなんでしょう。
昨年の春先、ヒノキ花粉の量が多かったからだと思います。カメムシはヒノキの実を餌にして育ちます。花粉が多ければ実も多くできるため、その翌年はカメムシが多発する傾向にあります。
さらに寒さに弱いカメムシにとって、今年の冬は比較的暖かかったことが幸いし、加えて、春先に雨が少なかったことも原因かと思います。雨が多いとカメムシの幼虫は木から落とされるので。
——カメムシ被害にはどんな対策が有効ですか。
農家の方には、できるだけこまめに農薬を散布することをおすすめしています。
一般の家庭では、照明に蛍光灯ではなくLEDを使用することをおすすめしています。カメムシは紫外線に集まる習性があり、蛍光灯よりも紫外線の少ないLEDを使用することで寄ってくるカメムシの数は減ります。屋内への侵入を防ぐために網戸も有効です。
また、1匹のカメムシがニオイを出すとそのニオイに反応して、他のカメムシが寄ってくることがあります。昆虫はニオイで自分の意思を伝達するので、「ここに餌がある」と伝達されてしまうと大量発生の原因になります。
だから、カメムシに刺激を与えないことがポイントです。直接触らないように、ペットボトルを半分に切ったもので捕まえて、そっと外に出すといった方法もあります。