#1
#2

「増えすぎた個体は自然界へ致命的な毀損をもたらす危険がある」

体長は70~100cm程度で体重は7~12kg程度とニホンジカよりも一回り小さいくらいのキョン。その頭には短い角があり、体色は黄褐色や赤褐色の個体が多く、頭から鼻にかけては黒色だ。

「本当に見た目とは裏腹に、昼間は“ぎゃー”とか“おおー!”とかものすごい声を出すんです。銃で撃ってしまうと食肉にも皮製品の加工にも使えなくなってしまうので、そのほとんどは罠にかかったところでナイフで仕留めています。“自分は殺されるんだ”というのはキョンにもわかるので、命乞いの声を出して仲間に助けを求めて“ヒィヒィ”と鳴くんです」(石川雄揮さん)

捕獲されたキョン、人間のような悲鳴をあげている(撮影/石川雄揮
氏 ⒸHunt)

その鳴き叫ぶ声と、黒いつぶらな瞳で命乞いするように見つめてくるのが、ハンターたちの心をえぐる。しかし一方で、原産地の台湾ではキョンのこうした声を囮(おとり)にした狩猟法もあるという。

「以前、台湾のハンターにも話を聞きましたが、捕まえたキョンをわざと鳴かせて、ほかのキョンをまねきよせて獲るそうです。台湾ではキョンは高級食材でありツノは高級漢方としても使われるし、実は日本でも古来から皮が甲冑や剣道の防具、伝統工芸品の印伝などに使われ、日本文化を支えてきました」

♯2で報じた通り、キョンの食肉化や加工術が進んだことで有効活用が進んでいるが、かつてはそのほとんどが駆除されて、捨てられてきたという。

「台湾では特定保護動物にも指定されているキョンが、来たくもない日本に連れてこられ逃げ出して増えてしまった。日本ではキョンの価値を知らずに殺して捨てるだけを10数年も繰り返してきたわけですが、昨今ようやく、仕留めた以上は食べたり革製品に加工したりして活用していく動きが出てきたのです」

石川氏は県内外の子どもや大人を対象に狩猟体験を通して命の尊さを伝えている。

「ここまで増えすぎた個体は自然界に致命的な毀損をもたらす危険があるので、やはり防除による頭数の調整は必要です。でもその前にしっかり立ち止まり、キョンの命もかけがえのないものだということをもっと強く認識すべきです。食肉や皮の活用はもちろんですが、うちではキョンの"いのちの声"と現場で深く向き合ってもらうことで、本質的な命の尊さ、大切さを参加者へ伝えています」

※「集英社オンライン」では、キョンをはじめクマ。イノシシ、サルなど野生動物のトラブルについて、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

#1
#2