人を食べたクマの攻撃性や食性は親から子へ伝わる

その現場は、2016年の5~6月にツキノワグマに襲われ8人の死傷者(死者4人)を出した、「十和利山クマ襲撃事件」の現場からもほど近い。
同事件を追跡した『人狩り熊 十和利山熊襲撃事件』の著者で、日本ツキノワグマ研究所の米田一彦所長がこう話す。

「東日本では、非常に強い攻撃性を持つクマの系統が存在すると思われる地域が複数あり、そのひとつが、今月18日に事件が起きた秋田県鹿角市です。ほかには、鹿角市に接する仙北市玉川地区(秋田県)、福島県の会津地方、新潟・長野県にまたがる妙高高原。いずれも近年で死亡事故、あるいは重傷事故が続発している地域です。

『人狩り熊 十和利山熊襲撃事件』(つり人社)
『人狩り熊 十和利山熊襲撃事件』(つり人社)
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クマに襲われた死亡事故が起きれば遺体が食べられる食害が起きますが、食害は人間を襲ったクマが単独で行なうのではなく、数頭のクマで遺体を食べることが多い。そうした攻撃性や食性は親から子へと伝わり、その地域はクマによる重大事故が連綿と続く危険地帯となります」

“人食いグマ”は、特定の地域でどんどん増殖していくというわけだ。

一方、5月21日には北海道別海町にある牧場で子牛4頭の死骸が発見された。付近には大型のヒグマのものと見られる幅17センチ程度の足跡が見つかり、牛の死骸には内臓を食べられたような痕跡も見られた。“牛喰い”のヒグマといえば、2019年以降、北海道標茶町などで乳牛66頭を次々と襲い、昨年7月に駆除された巨大ヒグマ、通称「OSO18」が思い出される。

別海町はOSO18が生息していた標茶町の隣接地。先述の米田氏の話に照らせば、OSO18の血が引き継がれ、このエリアで“牛喰い”のヒグマの系統が出現した可能性もある。地元住民のひとりは、「いつか人を襲うようになるんじゃ……と思うと怖い」と不安を口にした。