キャメロンが追及した、強く、たくましい女性像

『ターミネーター』はプロットこそ借り物だったが、中心にはキャメロン個人の「作家性」があった。それは後の作品と、彼の実生活で次第に明らかになっていく。強く、たくましい女性の追求だ。

『エイリアン2』は、リプリーが救出した孤児を守るためにエイリアンに立ち向かう「母もの」映画だった。『アビス』は、海底施設で働くダイバー(エド・ハリス)と女性科学者(メアリー・エリザベス・マストラントニオ)の夫婦が主人公。

ブルーカラー出身の夫とエリートでインテリの妻という関係は、監督キャメロンと製作者ゲイル・アン・ハードの夫婦を思わせる。『アビス』の夫婦は別居中だが、これを製作中のキャメロン夫妻もそうだった。

「脚本を書いたときは現実とパラレルになるとは思ってなかった」とキャメロンは言う。

『アビス』の夫婦は命がけで互いを救うことで絆を取り戻すが、それはパラレルにならなかった。89年、キャメロンとアン・ハードは離婚した。『ターミネーター』の全権利を彼女に残して。アン・ハードはその後、トップクラスの凄腕プロデューサーとして『アルマゲドン』(98年)や『ハルク』(2003年)などの大作を手がけている。

2023年に撮影されたジェームズ・キャメロン 写真/Shutterstock.
2023年に撮影されたジェームズ・キャメロン 写真/Shutterstock.
すべての画像を見る

同じ年、キャメロンは3度目の結婚をした。『ブルースチール』(90年)のロケ現場を覗いたとき、監督のキャスリン・ビグローに一目惚れしてしまったのだ。

ビグローは身長182センチのモデル並みの美女だが、そのアクション演出は徹底的に骨太だ。本人もメカや銃が大好きな、まさに「女キャメロン」だった。

しかし、似すぎていたせいか、結婚生活は2年しか続かなかった。離婚時にキャメロンはビグローに時価1億円の豪邸を譲り、別れた後も、ビグロー監督の『ハートブルー』(91年)をプロデュースし、『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』(95年)ではシナリオも提供している。

ビグローとの離婚と並行して、キャメロンは元妻ゲイル・アン・ハードのプロデュースで『ターミネーター』の続編に取りかかった。