――5月9日に『それでも、親を愛する子供たち』の第1巻が刊行されました。反響を教えてください。
押川剛(以下、同) 「かわいそう」や「切ない」といった感想が多いです。既シリーズ『「子供を殺してください」という親たち』(以下、『子供を殺して』)にはなかった反応なので、対象が子どもになるとこうも違うのかと思いました。
あとは、主な読者層は『子供を殺して』と重なっていますが、より高年齢の方々からも反響いただいています。75歳を超えた飲み屋の大ママがこの漫画を読んで「寄付をしたい」と申し出てくれたりもしました。親がどうしようもなくても、子ども自身が力をつけて明るく生きていってほしいという部分において、すごく希望が感じられる漫画になっているのかなと思います。
ーー『子供を殺して』の連載開始当初は、各所からの横槍も入ったとお聞きしました。今回は大丈夫だったのでしょうか。
北九州の児童福祉の現状について、本人たちにもわかるような形であとがきに書いているので、どういう反応を示しているかの情報は入ってきています。この業界をこんなふうに晒されるとはつゆほども思っていなかったのか、やっぱりビビっているみたいですね。
これまでの児童養護施設をテーマにした他のいくつかの漫画と違い、本作では施設の運営や行政の問題点についても描いていきますので、そういう意味でも、本当に新しい取り組みになると思います。
ーーそういった方々にとっては「余計なことをするな」という感覚なのでしょうか?
児童福祉の業界は、めくられたら困ることばかりです。私もこの漫画を作る過程でこの業界に足を踏み入れて、あまりに「やりたい放題」な現実に驚愕しています。子どものことは特に秘匿性が高いため、個人情報保護法や権利擁護を盾に悪事も真実も隠蔽しやすくなっている。でも真実を伝えていけば、寄付を申し出てくれた人がいるように、「よくなるかもしれない」という気持ちはあります。
例えば児童養護施設への寄付というと、自分たちが食べない余り物のレトルト食品なんかを送って、優越感にひたる程度の寄付しかなく、本当に相手にされていません。そのなかでも、ちゃんとした温かい対応をしている人が、驚くことに施設出身のヤクザの組長だったりするんですよ。これは近々、漫画に描く予定です。