「今年は受験生らの姿も皆無でした」
署名は2ヶ月ほどですぐ集まったという。署名に参加した、生まれも育ちも土佐山エリアの2人の娘を持つ主婦は言う。
「うちの子どもは地域にある市立義務教育学校・土佐山学舎に通っていますが、小学2年生頃に総合的学習でゴトゴト石を見に行くんです。また、数年前には9年生(中学3年生)が石のキャラクター『ゴトゴトくん』をデザインし、合格祈願のキーホルダーを作って受験生に送ったり、お土産店に卸していました。地域起こしを真剣に考える子供たちの気持ちさえ傷つけたんです」
「ゴトゴト石」の近くでお土産屋とお食事処を営む店は、大打撃をうけていた。
「石が動かなくなってから、売り上げも下がってます。以前は、石を見に行く前や後に立ち寄ってくれた方がいましたが、今年は訪れる受験生らの姿も皆無でした。この山には『山姥の滝』と『ゴトゴト石』くらいしか観光スポットがありませんでしたから、経済的にも大きく影響を受けています」(店舗スタッフ)
動かなくなった「ゴトゴト石」だが、事件後もしめ縄の交換は例年どおり、おこなわれた。参加した住民有志の一人は言う。
「子供の頃から山で遊ぶ際は行きしなや帰りしなに押したり揺すったりして遊ぶ、思い出の場所だった。お爺やお婆も、400年以上も前からあそこでゴトゴト揺れてる石だと言っていた。石には念があるから、下手に動かしちゃならんてこともよく聞いていた。そんな言い伝えすらわからない、理解しようともしない“バカ大学生”によるおこないは本当に腹立たしい」
石が再びゴトゴトと動く日は来るのだろうか。前出の佐藤地区長は肩を落としていた。
「石がある場所は道が狭く大型の重機は入れない山中です。庭師や石工や建設会社の方に頼めばなんとかなるのかどうかわかりませんが、それにしても莫大な費用がかかります。元に戻すのは至難の業です。学生らに処分は下ったとしても、これからは石をいかにして復旧できるかが課題です」
学生たちからは今も(3月14日現在)謝罪の言葉はないという
取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班