本当の意味で「帝国以後」の世界がやってくる
アメリカ人は、間違いを犯していると思います。アメリカの新聞や批評は、中国の人口状況などに関して破滅的な未来を予測した記事で埋め尽くされているのは知っています。たしかにこの人口状況は、中国を窮地に陥れ、中国が世界を支配する未来を遠ざけるでしょう。
しかし中国が、今後10年、15年の間に南シナ海や台湾問題で軍事的にアメリカを凌駕することは防げないと私は考えています。しかし人口動態を見れば、私たちは、新たな不均衡を心配する必要はないことがわかります。
そして、もう一つ予測されることは「崩壊」です。アメリカと、アメリカの「同盟国」という言葉は適切ではありません。「保護国」や「家臣」といった言い方が適切でしょう。その「家臣」であるヨーロッパの国や日本、韓国などは、現在は「ルールに基づいた秩序がある」と言います。
まるで、アメリカや保護国は、アメリカの覇権が崩壊すれば、世界にとって恐ろしいことであるかのようです。私は、それは正反対だと思います。
ソ連が崩壊して以来の20年間、アメリカは無秩序を生み出してきました。イラクやその他の場所での終わりのない戦争を行い、ウクライナをNATOの一員にする可能性を示唆し、ウクライナを混乱に陥れました。
世界には、アメリカ以外に強力な国家はありません。ロシアは生存をかけて戦っていますが、世界的な覇権を目指して戦っているわけではないのです。
世界は、アメリカ抜きである種の新しいバランスを簡単に見つけることができると、私は確信しています。ロシアでは、正教会の、つまりキリスト教のバックグラウンドを持てます。同様に、中国では、共産主義や儒教的なバックグラウンドを持つこともできるし、サウジアラビアやイランでは、イスラム教のバックグラウンドを持てるのです。
バックグラウンドが違っても、人々はうまくやっていけると思うし、最近はそれが示されていると思います。たとえば、BRICSのシステムは典型的なもので、異なる背景を持つ国々(民主的な国もあれば、そうでない国もある)が協力し交渉しています。私たちはみな、あるレベルではみな同じ人間なのです。
フランス人は「普遍的な人間」という概念を発明したことを誇りに思っています。彼らは「人間はもともと普遍的なものだ」と言いました。
人間はもともと道徳的であり、考え、交渉することができます。だから、生き残るためにグローバルなイデオロギーは必要ありません。国同士で話し合い、そのうちの一国による世界的な覇権など望むべくもないことに気づけば良いわけです。
しかしアメリカはそうはいきません。なぜなら、食料、機械、生産、生活水準を世界に依存しすぎているからです。つまり、世界には不安定な部分が残ることになります。その不安定な一点とは、アメリカなのです。
奇妙な考えだとお思いでしょうか。私が言っているのは、人々の考え方とはまったく逆の考え方かもしれません。人々がロシアを嫌っていることは、知っています。私はそれを知っていますし、日本のこともよく知っています。フランスの状況も日本と同じだと言えます。私は、フランスでも日本でもどうかしていると思われているでしょう。
でも、私にとって、問題はアメリカなんです。ロシアは問題ではない。ロシアはそれほど強力ではありません。ロシアは、自分たちに必要なものを自分たちで生産しています。世界に依存していません。しかしアメリカは、非常に危険な旅の途上にあります。