ムスリムが何百回も「結婚」できる理由
佐藤 誰もが絶対に守れない倫理基準を設定して、「あなたは罪人だからしたがえ」というのがキリスト教なんです。
これは国家の法律も同じで、自動車を運転する人で駐車違反を一度もしたことのない人はまずいません。誰かを狙い打ちで捕まえようと思ったら、その人が駐車違反をするまでずっと見張っていればいい。そうやって、誰でも何らかの違法行為をするような状況をつくっておくのは、国家にとって都合がいいんです。
本村 制限速度だって、まず守れない設定になっていますものね。違反する人が大量にいる中で、全員が捕まるというわけではなくて見せしめのように少数の人たちが切符を切られる。
佐藤 キリスト教は、そういう構成なんです。それこそ「情欲をいだいて女を見るな」なんて、すべての男性が絶対に守れない基準でしょ。
同じ一神教でも、イスラム教はそうではありません。そもそも人間は「汚い水」から創造されたと教えるわけですが、これは精液のことです。だから性欲にも寛容なところがあって、婚前の交渉は禁止だけれど、妻帯は4人までオーケー。しかも奴隷は別口です。その範囲でやりなさいというルールなんですが、抜け道はいくらでもあるんですよ。
実際、イスラム世界には200回も300回も結婚している人がいます。とくに、イランにはそういう男性が多い。
本村 えっ、どういうことですか?
佐藤 3人目まで結婚して、4人目の枠を空けておくんですよ。その枠を使って、結婚と離婚を繰り返す。そのための「結婚紹介所」があるので、そこに行って女性の写真を見て「この3番目の人と結婚したい」と言うと、「では結婚時間は2時間、離婚費用は3万円になります」みたいな条件が提示されるんです(笑)。これを「時間結婚」というんですが。
本村 なるほど、料金は「離婚費用」という名目なんだ。
佐藤 イスラム教では、ふつうに結婚するときにも離婚の条件を定めるんです。良家の子女と結婚するときには「ラクダ200頭と金100キログラム」みたいな高額に設定して、絶対に離婚できないようにしておくんですね。
でも4番目の枠を「時間結婚」に使っていれば、戒律に違反せずにいくらでも性欲を満たすことができる。絶対に誰も履行できない厳しい規則をつくって全員を罪人にするキリスト教とは、戦略が大きく異なるわけです。