コロナが消費者の背中を押したか?

義理チョコ文化の消失は、意識調査だけでなく支出額からも見出すことができる。

2人以上の世帯が、チョコレートに支出する月間平均額は500円程度だ。2020年までは、2月のその支出額が平均の3倍近い1400円前後に跳ね上がっていた。しかし、2021年には1200円台まで縮小している。2023年に入っても支出額は1307円であり、2020年と比較すると100円程度少ない。

※総務省「家計調査」より筆者作成
※総務省「家計調査」より筆者作成
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本格的なコロナ禍を迎える直前の2020年2月のチョコレートの支出額が1409円で、2015年以降最も高くなっている。総務省「家計調査」の推移を見ると、バレンタインデーがある2月のチョコレートの支出額が年を重ねるごとに多くなっていた印象を受ける。しかし、実際にはそうではないようだ。

各年2月のチョコレートの支出額から、その年の平均支出額を引いた統計がある。絶対額の場合、物価高による買い控えなどの影響があるため、本質的な消費動向は見えづらい。しかし、平均値からのズレであれば、その年のチョコレートの消費全体に対する、消費者の2月の重要度が見えてくる。

※総務省「家計調査」より筆者作成
※総務省「家計調査」より筆者作成

2020年は、2018年・2019年に比べると確かに上昇しているものの、2016年からの推移を比べると下がり基調だ。すなわち、消費者の義理チョコを忌避する意識はじわじわと浸透しており、コロナ禍が決定的となった可能性がある。

なお、2023年のカカオ豆の価格は1キロあたり3.3ドルだ。2022年までは2ドル台で推移していた。カカオ豆の価格高騰は著しく、円安も相まってチョコレート価格も上昇している。
チョコレート単体の支出額が下がる要因は少なく、本命チョコの需要が失われていないと仮定すると、義理チョコの数量が減少していると考えるのが自然だ。