「加藤俊介と、その母の物語」を描いた新曲
–––2024年2月14日のバレンタインデーには、4年ぶりのリリースとなる新曲『優しい光』がデジタルシングルとして配信されますが、本作は「母への愛」がテーマとなっています。このコンセプトに決まった経緯を教えてください。
ファンキー加藤(以下、同) ファンモン時代には『ヒーロー』というお父さん応援ソングがありましたが、ピンポイントで母親に向けた楽曲は、キャリアを通しても制作していなくて。元々、ファンの方々からはよく「作ってください!」と言われていたんですが……機を窺いながらも、ずっとタイミングを逃していたんです。
それに、コンセプトは自分の中にずっとあったものの、なかなか踏み込めなかった。照れくさいというのもありますが、世の中には「母」をテーマにした名曲がたくさんあるので……。でも、アニバーサリーイヤーという大義名分のもと、思い切って作ってみようかなと。
–––『優しい光』の歌詞の中では、母親との具体的なやりとりも描写されています。たとえば「借りっぱなしの5000円」というワードありますが、これはどうして…?
母親に5000円借りたという記憶が、ずっと僕のなかに引っかかっていて…(笑)。当時すでに20歳を超えていたんですが、たしかクラブかライブハウスに行くために借りたんです。
兄弟がしっかり就職して家庭を築いていくなか、一方で僕はミュージシャンを目指していたとはいえ、フリーターの身。親のスネをかじって暮らしていた当時の後ろめたさが、まだ引っかかっているんですよね。
–––作詞をするうえで、やはり加藤さんの実体験をベースに落とし込まれていったのでしょうか?
最初はそうではなかったんですよ。いわゆる“余白”というか、聴いてくださる皆さんが、それぞれ母親との思い出を添えられるような歌詞にしたいと思っていたんです。その方向性でずっとペンを走らせていたのですが、なかなか思うように書けなくて。
そこで、これはもう振り切って、「加藤俊介と、その母の物語」に仕上げようと。そうしたら、スラスラと言葉が出てきたんです。それに、自分の思い出をピックアップするほどに、曲がよくなっていくような気もしましたね。