そんな女に関わってはいけない
これを読んで、憤惑やるかたないになる女性がいるのはよくわかる。
そんなうまくいくはずがない。いずれ痛い目に遭うに決まっている。遭ってもらわなければ納得いかない。遭うべきだ。
けれども、世の中が決して公平ではないということは、とうにわかる年齢になった。どんなに努力しても、誠実に生きても、結果が伴うとは限らない。やりきれないことではあるが、人生は不平等で成り立っている。どんなに神様を呪おうとそれは覆らない。
だからこそ、今自分の手の中にある幸福を大切にしよう、誰かと自分を較べるのはやめよう、人は人、私は私であると、賢明な考え方を身に付けたはずである。
ここで言ってしまおう。
正直なところ、奪う側の闇云々などどうでもいいのである。
問題は、彼女のような女と関わらざるを得なくなった女性の方である。
美味しいところだけをまんまと味わい、悪びれもせず、のうのうと生きている。
そんな女など放っておけばいい、とわかっていながら、どうにも無視できなくなってしまう。いろんな感情が混ざり合ったこの心のざわつきを、どう納めればいいのだろう。
実はそんな迷路に迷い込んでしまい、人生に躓いた女性を2人、知っている。
2人は何も恋人や夫を奪われたわけではない。それなのに、痛い目に遭うという、不運を味わうはめに陥った。
ひとりめのA子は、彼女のような女を友人に持った女性である。いつの間にか彼女の奔放さに影響されたA子は思うのである。自分は何て平凡でつまらない人生を送っているのだろう。もっと違う生き方があるのではないか。自分も彼女のように思うがままに生きていいのではないか。
焦りに似た思いにかられたA子は、不倫に走るのである。「やらない後悔より、やる後悔の方がマシ」と、呪文のように唱えながら。
しかし待っていたのは厳しい現実だった。不倫はバレ、夫から離婚を突き付けられ、多額の慰謝料を請求され、子供たちの親権監護権まで取られてしまった。更に、土壇場になって不倫相手は家庭に戻ってゆく。
仕事を持っていたのが唯一の救いだったが、会社にも噂は広がり、陰口を叩かれているのもわかっている。が、子供たちへの養育費と、生活のために辞めるわけにはいかない。今も肩身の狭い思いで出勤しているという。この状況を「自業自得」と言われるがいちばん応えるそうだ。だってまさしくその通りだから。
「どうして私、こんな人生を選んでしまったのだろう」
A子の後悔は尽きないままである。それはこれからも続くだろう。
そしてもうひとりはB子。
奔放なママ友と知り合ったB子は、彼女の度重なる不倫を知って義憤にかられるのである。たまりかねたB子は、やがてママ友の夫、義父母、実家の両親、ご近所、友人たちに、その所業を書き連ねた文書を匿名で送りつけたのである。結局、それは怪文書として警察沙汰にまで発展し、差出人である彼女が突き止められた。
その時、自分のしたことが名誉棄損に当たると知り、頭が真っ白になったとB子は言った。まさかそこまで大事になるとは想像もしていなかったのだ。
当のママ友は、確たる証拠がないことでシラを切り、非難されるどころか、被害者という立場になって周りの同情を得ることになった。逆にB子は陰湿な人間だと周りから白い目で見られるようになった。夫は呆れ果て、更にそれが原因で子供がイジメに遭うのではないかと恐れて、結局、引っ越しせざるをえなくなった。
あの時は「ただ、あの鼻持ちならない女に反省してもらいたかった」と思っていたそうだが、今となると、どうしてあんなことをしてしまったのかわからないという。
「結局、彼女に嫉妬していたんだと思います」
B子はすっかり憔悴した様子で眩いた。
何て馬鹿な真似を、と呆れる人もいるだろう。けれど、誰もが心の中に魑魅魍魎を抱えている。悪いタイミングが重なると、相手への腹立たしさと自分への不満がごちゃまぜになって、歯止めが利かないまま、突っ走ってしまうことにもなりかねない。
だからこそ思うのだ。
もし今、あなたのそばに彼女のような女がいたら、すぐに距離を置くことをお勧めする。
極力顔を合わせないようにし、連絡を絶ち、関りを持たないように努める。彼女に対する嫌悪を含むすべての感覚を捨て、今自分が手にしている幸福を噛み締め、あんな女など元々いなかったことにする。
言えることはただひとつ、そんな女に関わってはいけない、それだけである。
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