「相手と対等」をお金で測る──
危険性経済力重視で三度離婚した38歳
「今、婚活中なんです。バツ3ですからどうなるか分かりませんが」
CM制作会社勤務の葵さんは38歳、安達祐実似のベビーフェイスだ。こんなにかわいらしい顔で、突然のカミングアウトである。バツ3とはとても思えない。
彼女の結婚観は独特なのだろうか。そこから聞いてみよう。
「身も蓋もないと思われるでしょうが、まずはお金です。元夫たちも全員、高収入でした。性格や顔より、やはりお金を持っていることが重要です。だって、お金って大事でしょう?」
彼女の言い分を否定するつもりはない。
お金に余裕があれば夫婦喧嘩の8割は解消される、と聞いたことがある。あながち間違いではないと思う。夫婦2人だけの暮らしならともかく、子育てにはそれなりの費用がかかる。最近の不況や値上がりのニュースを聞く度、いっそう強く感じるようになった。
私自身、30歳で会社員からフリーランスとなってから、今月の収入ゼロという経験もしている。入金のない通帳をじっと眺めながら、ちゃんと生きていけるのか、いたたまれない気持ちになった。お金の大切さは身に染みている。
「でも、そんなことを口にすると白い目で見られるので、誰にも言いませんけど」
まあ、彼女にもそれくらいの分別はあるようだ。
それで、最近の出会いは?
「この間、一緒に仕事をしたIT企業の役員です。仕事がひと段落して打ち上げが終わってから、お礼のメールを送ったんです。『この間、皆で行ったお店、素敵でした。またぜひご一緒させてください』ってかなり匂わせたつもりなんですけど『お疲れさまでした』って、杓子定規な返事しか来ませんでした。以前だったら、待ってましたとばかりにデートの誘いが来たものですけど。やはり若い女の子がいいんでしょうか」
最初の結婚相手は芸能事務所の社長
若さのせいとばかり決めつけるのは、ちょっと違うと思うが、彼女の気持ちはわかる。
結婚願望は若い頃からあったの?
「はい、もちろんです。就職してからは結婚前提でない方とお付き合いするつもりはありませんでした」
それはまたずいぶんと割り切った考え方である。
最初の結婚はいつ?
「23歳の時です。相手は就職してすぐ、研修で参加した撮影現場で名刺交換した芸能事務所の社長です。何かとメールをくれて、私も就職したばかりで不安だったので、相談に乗ってもらっているうちにお付き合いが始まりました。彼は個人事業主。そこそこ売れている俳優さんも何人か抱えていて、かなりの高収入でした。なので、出会って半年後に結婚しました」
相手が芸能事務所社長とは……のっけから現実味のない話で対応に戸惑ってしまうが、何にしろ出会って半年で結婚とはなかなかに大胆である。
そうは言っても結婚はタイミングや勢いが必要だから、若いふたりなら情熱的になって一気に突き進むこともあるだろう。
「あ、いえ。若くはないです。彼は私より27歳年上なので、当時、50歳でした。その時、すでにバツ2でした」
さらりと言われて言葉に詰まってしまう。
ということは父親と同じくらいの年ではないか。葛藤はなかったのだろうか。周りもさぞかし驚いたことだろう。
「社会人1年目の冬でしたから、びっくりした人は多かったですね。でも私の両親はそういうことには口を出さないタイプだし、会社も自由な社風だったので、特に問題はありませんでした」
仕事はどうしたの?
「元々結婚しても辞めるつもりはありませんでした。仕事は楽しかったし、子供が生まれたとしてもずっと働くつもりでいました。もちろん彼もそれを認めてくれていました。結婚生活はすごく順調だったのですが、半年ほどした頃、彼の事務所の所属タレントが不祥事を起こしてしまったんです。
薬物スキャンダルだったんですけど、CMや出演ドラマがキャンセルになって、その賠償金を背負うことになりました。それで資金繰りが苦しくなって、彼は会社のお金だけでなく、私財を投じると言い出したんです。私、どうしても賛成できませんでした。そんなことをしたら家も預金も何もかも失ってしまう。でも何を言っても彼の決意は固くて、将来のことを考えて、結局別れを選択しました」