「ヤングタウン!の巻」(ジャンプ・コミックス29巻収録)
今回は、大原部長と両さんが、原宿の喫茶店で一日店長&店員を務めるお話をお届けする。
本作の舞台になっている原宿は、もともとは閑静な高級住宅地だった。だが1970年代の終わりごろから、ファッションの街、若者の街としてもてはやされるように。渋谷に「PARCO」や「109」といったファッションビルが開店し、表参道沿いに青山、原宿へと若者の流行発信エリアが形成されていき、その一端が原宿になったのだ。
本作が描かれた1982年の原宿では、奇抜な衣装とメイクに身を固めた「タケノコ族」が道で踊りまくりファッションやアクセサリーなどの小さな店が軒を並べた竹下通りは、初詣でごった返す神社の参道並みの人混みで埋め尽くされていた。
そんな土地の喫茶店を、流行ともファッションとも無縁なオッサン2人が切り盛りする……。どんな惨劇が起こるか、想像はつくと思う。
さて、今回も、日本の喫茶店の歩みについて少し述べておきたい。
戦後、日本の復興とともに喫茶店もまた復活を遂げる。1960年代から1970年代にかけては、ちょい癖ありなマスターの個性とこだわったコーヒーが売りの、個人経営の喫茶店が激増。
同時に終夜営業の大箱や、クラシック、ジャズなどをハイエンドなオーディオ機器で聴かせる音楽系の店なども盛んになり、喫茶店の全盛期が到来した。
1972年には「学生街の喫茶店」という曲がヒットしたように、喫茶店は若者が何時間もすごす場となり、若者文化の象徴にもなっていた。
1970年代後半になると、ゲーム機「スペースインベーター」の国民的流行によって喫茶店のテーブルがゲームの筐体に入れ替わったり、時間制限を設けて店の漫画を読ませる「漫画喫茶」が登場したりするなど、サブカル方面への顧客拡大も見受けられた。
それでは次のページから、若者の拠点・原宿の喫茶店で繰り広げられる、両さんと部長の悪戦苦闘の一日をお楽しみください!!