兵庫県警本部に高級ミニバンで乗りつけた執行部の最高幹部

「六代目山口組の幹部3人が兵庫県警に行くようだ」

暴力団関係者らの間で、こんな情報が出回ったのは7日午前のことだった。名前が挙がった六代目山口組の幹部とは、森尾卯太男本部長、津田力若頭補佐、安東美樹若頭補佐の3人。

組長、若頭に次ぐ「ナンバー3」の実力者である森尾本部長はじめ、いずれも「プラチナ」と呼ばれる執行部の最高幹部だ。

続けて、2017年に神戸山口組から脱退した後、「任俠団体山口組」から「任侠山口組」、さらに「絆會」へと名称を変えて活動していた組織の幹部が六代目山口組傘下の有力団体を訪問したとの情報も飛び交った。

「抗争終結に向けた動きのようだ」「移籍の話か」などと憶測も広がり、緊迫の度はさらに増した。

関係者内で出回っていたLINE
関係者内で出回っていたLINE

その数時間後、兵庫県警本部に乗りつけた高級ミニバンから降り立つ幹部の姿が報道陣のカメラに捉えられ、裏社会でのざわめきはどよめきへと変わった。

「県警本部を訪問したのは、名前が挙がった森尾氏、津田氏、安東氏の3人でした。その場で『全国の任侠団体の申し出により山口組は抗争を終結する事にした』などと書かれた『宣誓書』が県警に示されました。

その際には、神戸山口組の井上邦雄組長、元神戸山口組の副組長で宅見組の入江禎組長、同じく神戸側から離脱した池田組の池田孝志組長ら敵対組織の幹部の名前も挙げています。さらに、絆會の織田絆誠会長とも『今後一切揉める事はしません』と明らかにしました。

『一般の市民にはご迷惑お掛けしました』と結び、六代目側のナンバー2・高山清司若頭と執行部一同の総意であることも明言したのです」(在阪社会部記者)

兵庫県警察本部(PhotoACより)
兵庫県警察本部(PhotoACより)

電撃的な「終結宣言」に至るまでの予兆はあった。発端は3月、六代目側とも関係の深い関東の有力団体・稲川会の幹部の動きだった。

「稲川会の幹部が六代目山口組と神戸山口組の抗争を終わらせるための『連判状』を作成するために全国の組織を回っているとの情報が出回りました。さらに4月に入ると、この『連判状』に関東の主だった団体が同意し、六代目山口組と敵対する絆會も歩み寄りの姿勢を見せたとの話も出回りました。

この『連判状』は、要望として稲川会と住吉会が六代目山口組側に渡したとされました。ただ、肝心の神戸山口組を率いる井上組長が、この『連判状』の中で抗争終結の条件とされた引退を受け入れなかったとも伝えられ、先行きは不透明なままでした」(同前)

兵庫県警に車で乗りつける森尾卯太男本部長(左)、安東美樹若頭補佐(右)(写真:産経新聞社)
兵庫県警に車で乗りつける森尾卯太男本部長(左)、安東美樹若頭補佐(右)(写真:産経新聞社)

六代目山口組の幹部による電撃訪問は、こうした流れの中でのものだったため、驚きをもって受け止められたという側面もある。 

さらに、抗争相手との「手打ち」や明確に雌雄を決することもないままでの一方的な終結宣言は、数々の抗争を重ねてきた山口組の歴史の中でも、異例ともいえる対応だったという。