ドラマ『VIVANT』を生んだ究極の組織論はラグビーがベース!?

福澤 ぼくもラグビー漬けの大学生活だったから、テレビの仕事――演出や演技について学ぶ余裕がなかったので、それらはTBSに就職してから、現場で学んでいくしかなかった。

それでディレクター、監督としてはじめて作品をつくるときどうするか……。真っ先に頭に浮かんだのが、大学時代にお世話になった監督の上田(昭夫)さんの指導法です。ラグビーの監督も、映画監督も、同じ監督ですからね(笑)。

上田さんはプレイヤー個人に自由にやらせてくれました。方針を決めると、あとは細かく口を出さない。ある程度は、プレイヤーの裁量に任せてフリーにやらせる。それで行き過ぎたときだけ声をかける。だからぼくのドラマ制作の原点にはラグビーがあるんです。

――佐々木社長は同じテレビマンとして、福澤さんの仕事ぶりをどのようにご覧になっていますか?

佐々木 経営者として意識しているのは、福澤さんのような突出した個性の持ち主を組織のなかでどう位置づけるかです。組織論というとほとんどの人は「協調性を持ち、約束を守る」と受け止めがちですよね。ラグビーで言えば「チームの規律を守り、戦術を遂行し、準備したサインプレーを成功させる」となる。ぼくらもラグビー部時代は毎日、これを徹底してやりました。

早大ラグビー部時代の佐々木社長(右)
早大ラグビー部時代の佐々木社長(右)

でもね、ぼくらの1学年下には、吉野(俊郎)という天才的な選手がいて、彼は決めごとを守らずにつっ走るんです。それで一度、ぼくが吉野を怒ろうとしたら、監督の大西(鐵之祐)さんに「いや、怒らんでええ」とたしなめられて。それどころか「吉野が走っていったら、お前らがついていけ」というんです。

いやいや、規律や繰り返し練習してきたサインプレーはなんだったんだと、そのときは反発を覚えましたが、今になって思うとあれこそが究極の組織論だと感じます。すなわち、組織やチームに突出した選手がいたら、周囲がその個性に合わせるということです。

「組織の全員が決めごとどおりに動いていたら、想像を越えるプレーは生まれない」と語る佐々木社長
「組織の全員が決めごとどおりに動いていたら、想像を越えるプレーは生まれない」と語る佐々木社長

福澤 決まり事や戦術に縛られずに選手に自由にやらせるという慶應の上田さんの指導にも重なりますね。

佐々木 それでいうと福澤さんには突出した個性がある。天才だから、社内の決め事や戦術とは違う発想をするし、強烈な個性は、ときに組織の協調性を乱すこともあるかもしれない。とはいえ、力がある個性を押さえつけたら、閉塞感が生まれてしまうし、士気も上がらない。

だからこそ、組織として力がある個性を活かす方法を考えなければならないんです。その流れで言えば、福澤さんという個性が生んだのが『VIVANT』だった。

福澤 おかげさまで『VIVANT』が当たり、ドラマを見るようになったと話してくれる人が増えたのでよかったですが、今までにないほど予算を使いましたから、正直、外したらヤバいと思っていました(苦笑)。