前編はこちら

毎日生徒の下宿先を回っていた

――前編で本間先生は赴任当初、授業を聞いてもらえず職員室にひとり戻り、涙を流すこともあったというお話ですが、生徒の心を掴めるようになったきっかけはありますか?

本間涼子先生(以下、同) 心を掴めているかはわからないですよ。でも例えば、赴任当初は自分にできることは何もなかったけど、時間だけはあったから、放課後、下宿をまわって生徒たちと話をしにいったりはしましたね。

――北星余市は全国から生徒が集まる性質上、寮下宿生も多いんですよね。

そうですね。7、8割が寮下宿生ですね。
で、今思えば本当に細かいとこまでやってたなと思うけど、下宿先の生徒のところまで行って、「あんた今日プリント書いてへんかったやろ」とか「今日やってた授業の説明するから」と教えに行ったり、学校サボった子がいたら「なんでサボったん?」って様子見に行ったりすることをしょっちゅうしてました。

北星余市にスクールカーストやヒエラルキーは少ないという。後輩のつくりあげた文化祭に駆け付けた卒業生
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――そこまでやる先生は他にいないのでは。

いや、だって他の先生は仕事あったから(笑)。
新人1年目の私には授業以外の重要な仕事なんてまわってこない。できることって言ったら、子どもを知ることしかないなって。

全然しゃべる取っかかりもないけど、実際に生徒とかかわってみないと全然わからへんよなって思って、毎日下宿を回ってました。

教室ではなかなか反応がないような子やヤンチャで話を聞かないような子でも、下宿だと子どもたちにとっては自分の家みたいな安心感があるのか、普通にしゃべってくれるんですよ。生い立ちだったり、恋愛の話だったり。

――そうしているうちに授業を聞いてもらえるように?

授業は下手なままかもしらんけど、「まあ、聞いたるか」みたいな感じにはなりましたね。