「あだ名」禁止と「さん付け」奨励は別のトピックス
――最近、「あだ名禁止」や「さん付け奨励」を行う小学校が増えてきるようですが、教育の現場では以前からそのような動きはあったのでしょうか?
あだ名がいじめの原因となる可能性がある……というのがひとつあって、「じゃあ、あだ名をやめましょう。その代わり全員『さん付け』にしましょう」となり、今のこの流れになっています。
しかし、「あだ名禁止」と「さん付け奨励」は少し分けて考えた方がいいと僕は考えています。というのも「さん付け推奨」についてはもっと以前から議論されていました。昔から男子は「君(くん)」、女子は「さん」で分けて呼ばれていましたが、「男女で分けるのはおかしいのではないか。『さん』で統一しよう」という意見は何十年も前からあったんです。
そこに近年、「あだ名を禁止にしてはどうか」という考え方が台頭してきたので、あだ名でなかったらなんと呼ぶかを考えた時、「『さん付け』にしよう」と。なので「さん付け」は、「あだ名禁止」が出てきたのにつれて、代替措置として注目を浴びてはいますが、元々の狙いは「あだ名禁止」とはまったく別のところで議論されていたものです。
――「あだ名」にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
あだ名は人との距離を縮めたり、ある子をすごく光らせたりすることができます。いじめられっ子がヒーローになったり、あだ名を手がかりに自分に自信が持てた子のケースを、実際に間近で見てきました。
ただ、あだ名をつけられても本人が嫌じゃなかったらいいんだけど、本人が嫌がっているのに呼び続けるのがいっぱいあるから、それがいけないという話で。
その上で、「あだ名を禁止したからいじめがなくなる」という考え方は短絡的だと感じています。