何を学んだのか想像できない造語の学科名称
現時点では、世界標準への対応状況という観点で見ると、日本の大学はさまざまな問題を抱えていると言わざるを得ません。
たとえば大学を卒業すると学士号が授与されます。現在、学位は「学士(工学)」や「学士(経済学)」のように、後ろに専攻表記を入れた形で記載されます。
この専攻表記ですが、かつては大学設置基準によって29種類と定められていました。1991年にそのルールが緩和され、各大学が自由に定められることになった結果、2015年の時点で723種類にまで急増。うち66%は一つの大学でしか用いられていない表記でした。
91年頃はちょうど18歳人口が急激に減少し始めたタイミングでもあります。日本の高校生を意識するあまり、「本学でしか学べない学問です」という触れ込みで各大学が独自の学部・学科を乱立させた。その結果、高校教員も進路指導が不可能になるほど多様化してしまったのです。結局のところ何を学んだのか想像できない造語の学科名称も少なくありません。
若者受けのいい「国際」「情報」「子ども」にカタカナ語学部
ここまででも大学側の施策には反省すべき点が多いのですが、さらに問題なのは学位の国際通用性です。
大学が授与する学位には通常、英語表記した場合の名称もあらかじめ定められています。たとえばアメリカの大学であれば、人文・社会科学系ではBachelor of Arts、自然科学系なら Bachelor of Scienceとするのが一般的。より詳しく専攻分野を表記したい場合はBachelor of Arts in Economicsのように後ろに書き添えます。
日本の大学が授与する学士号の専攻表記で、このルールに従って英語表記をしているのは3割程度。全体の7割は、Bachelorの後ろに学科名をそのまま英訳した言葉を記述するなど、独自の表記です。ぱっと見て専攻分野が理解できるのならまだ良いのですが、日本語でもイメージしづらかった学位名称を、そのまま直訳してしまったような学位もあります。これで世界共通の証明書たり得るのか、少々心配です。
地元の高校生の興味を引こうとするあまり、若者受けの良い「国際」「情報」「子ども」といった単語を組み合わせたり、聞き慣れないカタカナ語を織り込んだりと、多くの大学がオンリーワン学部をこれまで作ってきました。
グローバル化を目標に掲げながら、やってきたのはむしろローカルしか見ていない施策だったのです。場当たり的な学生募集戦略のツケは、学生や卒業生が背負うことになります。学位が世界共通の証明書であることを、大学自身が軽視してきたのではないでしょうか。
これらは一例に過ぎません。教育システム自体に国際通用性を持たせるとなれば、職員にも世界の大学教育の理解が求められます。
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