大学怪談には「秘密の地下」にまつわる伝説が多い
「学校の怪談」は大学怪談から始まった。だとすれば、近年における大学怪談の事例も無視すべきではないだろう。では、いくつかの具体的事例を挙げていくことにする。
筑波大学は、そこにまつわる怪談・都市伝説の多さで全国トップに挙がるだろう。
窓から空を眺めているように見えた女性が実は首を吊っていた……という「星を見る少女」。学生寮を走るマラソン選手の幽霊をゴールテープを使って成仏させる「ランニング幽霊」。もはや全国的に周知された定番怪談だが、これらの現場が同校の平砂学生宿舎であるとは、昔からよく言及されている。
また校内敷地ではないものの、「姉さんビル」も有名だ。大学近隣にある公務員官舎の壁のヒビが「姉さん」と読めるというもの。姉を慕う弟がその棟から飛び降り自殺した、または交通事故で激突したためにできたヒビで、いくら塗りなおしても消えないのだという噂が囁かれていた。該当するヒビ割れは実在していたが、90年代半ばの補修工事によってあっさり消えたようである。
これらは大学内の怪談という範囲を飛び越え、都市伝説として世間に広まりすぎてしまった。ほとんどの読者に知られた話ばかりだろうから、むしろ本章では扱い難い。
とはいえ「第四学群」の噂だけは紹介させてもらおう。筑波大学では2006年まで、第一~第三学群といった学問分野のグループ分けが行われていた。だが実は秘密の第四学群も存在し、その研究施設が地下に隠されているのだという。
第四学群では日夜、外部には公表できない軍事研究やバイオテクノロジー研究が積み重ねられているのだ。もちろん一般学生の立ち入りは禁じられているため、もし地下施設に入ったことが当局に知られればたちまち除籍処分となってしまう……といったものだ。
ちなみに「人面犬」が流行した時にも、人面犬とは第四学群での開発中に逃げた実験体だったとの噂まで語られた。
この噂について検証した『筑波大学新聞』2018年7月17日号を参照すると、「地下の巨大空間の噂のもとは、地下5メートルにある全長約14キロメートルの共同溝と考えられる」とのこと。
電気ガス水道などの配管を設置するスペースらしく、「約10年前に学生が共同溝に勝手に侵入した事例はあるが、厳重注意で除籍にはなっていない」そうだ。
ことほどさように、大学怪談には「秘密の地下」にまつわる伝説が多い。世間から隔絶した研究空間というイメージから、隠された地下のような幻想が託されやすいのだろう。