脳の学習を妨げる「上から目線」
タクシーに乗ったときに、運転手さんに横柄な態度をとってしまう人。
飲食店で、店員さんに命令口調で話しかけてしまう人。
若者に対してはついぞんざいな言葉で対応してしまう人。
そんな風に周囲の人に対して上から目線で接する中高年は、意外と少なくありません。特に、会社員時代、それなりに出世して役職等についていた人ほど、この傾向が顕著に現れます。日頃から部下に対して命令口調で指図する癖が抜けないがゆえに、どうしても相手に対して偉そうな態度をとってしまうのでしょう。
でも、こうした態度を取るのは、脳にとっては大きなデメリットです。なぜなら、新しく何かを学ぶ上で、謙虚であったほうがよいからです。「どうせ若者の意見なんて聞く必要がない」と構えてしまえば、せっかくの刺激や知識も上手に受け取ることができなくなります。
「年長者なのだから若者に対して上から目線になってしまうのは仕方ないのでは」と感じる人もいるかもしれません。
ですが、世界の潮流は、フラット化がスタンダードになりつつあります。そして、世界のトップクラスの環境で働く人ほど、年齢などを気にせず、誰に対しても平等に接する傾向が強まっています。
以前、僕はアメリカのマウンテンビューにあるGoogle本社キャンパスを視察に行ったことがあります。その際、非常に印象的だったのが、年齢や性別を問わず、社員全員がお互いにフラットに話している光景でした。また、その場には、当時同社のCEOであったラリー・ページがいたのですが、一見大学生と変わらないようなTシャツとデニムというラフな格好で、一般の社員たちの中に紛れ込んでいたのです。
上下関係をまったく感じさせない風土は日本企業とは大きく異なるものですね。日本では年功序列を基本とした人間関係の作りかたがしみついている人が非常に多く、退職後でさえも言動の端々にその傾向が出てしまうのでしょう。
でも、会話というものは、本質的には対等な関係でないと成立しないものです。
「人に対して少し上から目線で接してしまう傾向があるな」という自覚がある人は、ぜひ柔道や剣道といった武道の態度を学ぶべきだと思います。武道では、相手が弱かろうが強かろうが、礼に始まり、いざ試合が始まれば、お互い容赦せずに組み合うわけですが、終わればそこでまた礼をして終わります。
友になり、敵になり、友になる。そうしたリスペクトの仕方は、年齢を問わず、非常に大事になってくるのだと心してくださいね。