自販機でもみじ饅頭を売り続ける理由

自販機ビジネスに参入してから4年が過ぎたが、追随する企業はまだいない。

「たまたまうちのパッケージの大きさが自販機に合うものでしたが、わざわざ他社がパッケージの形状を変えることはないと思います。さらに大手は販売網もしっかり持たれているから、自販機販売の必要性を感じないかもしれません」

しかも、商品補充の手間が大変だとくる。それなのになぜ紅葉堂は自販機でもみじ饅頭を売り続けているのか。そこには竹内さんの切実な思いがある。

「広島といえばもみじ饅頭だよね」と言われるが、地元の人たちはほとんど食べてないと痛感する。土産品ではなく日常菓子としても愛してもらいたい。それが竹内さんの願いだ。だから気軽に買える自販機を作った。

「ビジネスマンが営業で差し入れに使ったり、部活動帰りの子が小腹を満たすために食べたりと、広島の人たちの生活に溶け込んでほしい」

だからこそ、地元客しかいないようなスーパー銭湯で売れていることが、竹内さんにとって何よりもうれしい。もちろん、より地元に根付かせるためのハードルは高い。競合がコンビニのスイーツになるからだ。価格競争は厳しいが、味で勝負できるよう企業努力する。

紅葉堂本店。今では平日でもにぎわう
紅葉堂本店。今では平日でもにぎわう

もみじ饅頭の生地は地産地消にこだわっていて、広島・世羅町で育てられている「純国産鶏もみじ」の卵と、瀬戸内海産の小麦粉を使う。さらには最近、あんこの工場を宮島に建てた。菓子屋として優れた商品を生み出したいという意地がある。もみじ饅頭の味わいをとことん追求していく。

周囲をあっと驚かせる、紅葉堂の次なる奇襲に期待したい。

取材・文/伏見学