コロナ禍でゴーストタウン化した宮島の“希望”に
「興味を持ってもらえそうだ」と手応えを得た竹内さんは、宮島の外にも自販機を広げることに。人づてに取引先などを紹介してもらい、台数を増やしていくと、次第に飲料メーカーから「うちと一緒に出しませんか」といったオファーが来るようにもなった。
販路拡大と並行して自販機の種類も変えた。今のメインは冷蔵用で、もみじ饅頭2個入り(260円)および3個入り(390円)の箱で売っている。
自販機ビジネスを始めて約1年。広島市の中心街にも設置できるようになったタイミングで、世の中を新型コロナウイルスが襲う。観光地である宮島は壊滅的な打撃を受けた。廿日市市の調査データによると、過去最高の来島者数を記録した19年の465万7343人に対し、21年は約60%減で、過去最低の188万2351人に。紅葉堂をはじめ多くの地元商店は営業できる状況ではなかった。
そんな中で、もみじ饅頭の自販機は“希望”だった。
「宮島はゴーストタウンになりました。そうした絶望的な状態でも、自販機用のもみじ饅頭を作ることができたのは会社にとって救いでした。実際、広島市内で買ってくれる人も結構いましたし、毎日の仕事と売り上げがあるのは本当にありがたかった」
最も売り上げが大きいのは広島空港で、2番目がアストラムラインの本通駅。ともに人が多く集まる立地である。ただし、その次がスーパー銭湯という意外な場所だった。
「冷たいもみじ饅頭なので、風呂から上がって、牛乳でも飲みながら食べてくれる人が多いようです」と竹内さんは説明する。
順調に見える自販機ビジネスだが、ここまでは苦労の連続で、今も課題がある。まず、商品の補充はすべて自社で行なっている。なので週に3日、自販機を順番に回って、商品を入れ替える。少し前までは竹内さんがこの業務を担当し、クルマで広島中を走っていた。
「商品の管理が一番大変。賞味期限は2週間ですが、1週間ごとに全部入れ替えます。その前に売り切れても補充はできないため機会損失になります。逆に売れ残っていても商品は入れ替えるから今度はロス品に。1台1台状況が異なるので、その管理に苦労していますね」
もう一つ、商品が自販機内部に詰まってしまうことがある。紙箱の厚さや材質を変える工夫をしてきたが、それでも時折起きてしまう。それを回避するために、構造の異なる新しい自販機の導入を徐々に進めているところだ。