チーム強化のため、岡田流“メッセージの伝え方”
岡田彰布監督も、佐藤輝明選手に対しては、様々なアプローチの仕方で覚醒を促しているように感じます。
ホームランを打った後の打席で、ボール球に手を出して三振した際、「おかしくなる可能性があるよ」と苦言を呈することもあれば、「ホームランを打った打席よりも凡退したファーストゴロの打席が一番よかった」というコメントを残したこともあります。
これは、凡退した結果だけを見るのではなくて、打撃の形や、打つポイントがどうなっているかという目線で見ているからこそ言えるのだと思います。
打者は、自分が打てるポイントを複数持っているものなのですが、相手バッテリーは、打者のポイントをずらして、どんどん調子を悪くさせようとしてくるので、知らず知らずのうちにポイントが狂ってしまうのです。
そこで「打つポイントが大切だ」と本人に直接言わず、メディアを通じてメッセージを伝える“うまさ”は、今季の岡田監督らしいのではないでしょうか。
その一方で、打順と守備位置は固定して使うとシーズン前から明言していたにもかかわらず、4月半ばの結果が出ない時期には「調子が悪かったら外す」といった発言もあり、実際に、佐藤輝明選手が先発メンバーから外れた試合もありました。
ただ、これに関しては佐藤輝明選手に危機感を持たせるだけではなく、ベンチで控えている選手のモチベーションを保つという意味合いもあったのではないかと推察します。
1年間メンバーを固定できればいいとは思いますが、本当に固定できる強いチームと、まだまだ流動的でこれから強くなっていくチームは違います。今シーズンの阪神タイガースは後者でしょう。
実際、佐藤輝明選手が先発メンバーから外れた2試合は、北海道日本ハムファイターズから移籍してきた渡邉諒選手が三塁を守りましたが、渡邉選手の責任感と緊張感が増したことは間違いありません。
遊撃手でいえば、木浪聖也選手が打撃で好結果を残し続けていることもあり、小幡竜平選手の出場機会が激減していますが、小幡選手は代走で起用された試合で、自分の武器であるスピードを存分に生かし、好走塁で決勝点をもぎとったとこともありました。
こういう姿を見ると、選手全員がモチベーションをうまく保つことができているのだなと思います。
現在は、ライトのレギュラーが固定されていない状況ですが、ある意味、わざと固定していないという見方もできます。ファームで結果を出した選手をすぐに一軍で使えば、当然ファームの選手たちのモチベーションもあがります。
岡田監督は、チーム全体としてレベルアップするために何が必要なのか、選手個々が成長するために何が必要なのかというところを考えて、いろいろな手をつくしているのではないでしょうか。